ホークス工藤監督、投手目線の采配ズバリ 「明るく真剣に」そして“嫌らしく”

ベースボール・タイムズ

シーズンを見据えた投手陣のペース配分

ブルペン陣に配慮し、先発投手を引っ張るのも工藤流。大隣(右)はここまでチーム最多の3完投勝利を挙げている 【写真は共同】

 試合中の工藤監督の采配の特徴の1つとして、先発投手をできるだけ長いイニングまで引っ張るということが挙げられる。

 指揮官とともに今季からチームに加わった吉井理人ブルペン担当コーチは、「確かに引っ張るよね。監督も佐藤(義則)コーチも先発完投型だったから、その点で2人の意見が合致しているんじゃないかな」と語る。それが長いシーズンを見据えた上でプラスになるとも分析する。

「ブルペン陣を本当に大事に使ってもらっていると思う。サファテにしても、決して無理はさせないからね。シーズン終盤になれば、これまで以上にブルペンを使わないといけない試合が増えるはず。つまり、シーズンを見据えたペース配分ができているということ。今、これだけ大事に使ってもらったら、ブルペン陣は『シーズン終盤は監督のために目いっぱい働くぞ』という気持ちになるはず。少なくとも、僕が現役であればそう思うね」

 投手として現役生活30年で635試合に登板。引退後には解説者として見識を広げ、筑波大学大学院ではスポーツ医学のノウハウも学んだ。監督としては“ルーキー”だが、ブルペン陣への配慮は忘れない。その重要性を、誰よりも知っている。

明るいキャラクターが好影響

選手会長の松田(右)と今年から主将に任命された内川(中央)がチームを明るく盛り上げている 【写真は共同】

 自身が持つ明るいキャラクターも、チーム作りに好影響を生んでいる。交流戦の最高勝率が決定した後、工藤監督はこう語った。

「キャプテンの内川と選手会長の松田が、とにかくベンチで声を出してチームを引っ張ってくれた。彼らが常に声を出すことで、負けたときでも『よっしゃ、次は行くぞ!』という雰囲気になる。それがこの成績につながった」

 勝ち試合の後も、取り囲む報道陣に対して、自ら「勝ったんだから、もっと笑顔で、笑顔で」と語りかける。その姿勢、要求は、間違いなくチームにも浸透している。工藤監督の野球のモットーは「明るく真剣に」。ただ明るいだけではない。試合や選手のことを語るときには、常に真剣な眼差しだ。

 日本一となったチームを引き継いだ難しさがあったはずだが、交流戦から堂々たる“横綱野球”を披露。目下のライバルに3タテを食らわして首位に立った。まだシーズンは半分以上残っており、ここからさらにヒートアップしていく夏場の戦いを迎える。だが、就任1年目の工藤監督の采配が大きくぶれることはないだろう。

「明るく真剣に」――。むしろ、今後はさらに対戦相手にとっての“嫌らしさ”が増していくのかもしれない。

(文:藤浦一都/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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