ドゥラメンテ二冠、父を超えたダービー 涙のミルコ「凱旋門賞チャンスある!」

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消えた“荒々しさ”、だからこそ伝わる強さ

荒々しさは消え、当たり前のようにドゥラメンテはダービーゴールを先頭で駆け抜けた 【中原義史】

“ドゥラメンテ”の馬名の意味は、音楽用語で“荒々しく、はっきりと”。名は体を表すと言うが、4コーナーでの急激な斜行から一転、直線で爆発的な末脚を繰り出した皐月賞を代表するように、ドゥラメンテはその粗削りな荒々しさが魅力であり、不安要素でもあると言われてきた。つまり、勝利への最大のポイントは折り合い。ミルコも「この馬はテンションが一番大事」と、折り合いに相当な気を遣っていた。ところが、だ。

「今日はすごく良かったですね。返し馬でちょっとテンションが高くて、1、2コーナーでも少し引っかかったけど、その後は折り合うことができました。ポジションもすごく良かったです」

 道中の位置取りはちょうど中団。人馬とも実にスムーズに折り合っている。思えばパドックでも窮屈なところはなくゆったりと歩いていたし、調教助手が一人で馬を引くくらい落ち着いていた。

 この“変身ぶり”の裏には何があったのか? いや、ダービーに向けた秘策のような特別なことは何もない。ここまで積み重ねてきたことが実を結んだものだと堀調教師は語る。

「競馬場への輸送、厩舎に入ってから、装鞍、パドック、レースと今日はスムーズに行くことができました。“荒々しい”なんて言われることは恥ずかしいことと思っていたんですが、今日のレースを見ていただいて、そんなに荒々しくはないと思っていただけたんじゃないでしょうか(笑)」

 トレーナーの言葉通り、今日のドゥラメンテは荒々しいどころか、実に涼しい顔をして、当たり前のようにダービーを制した。だからこそ、破天荒な競馬だった皐月賞よりも、いっそう強さが伝わって来る。ミルコも「直線はすごかった。すごく切れましたね!」と、いまだ手のひらに残る感触に興奮冷めやらず、といった様子だった。

凱旋門賞か、三冠か――

凱旋門賞か三冠か、夢は広がるばかり 【中原義史】

 これで、父キングカメハメハに続く父子2代でのダービー制覇。そういえば、キングカメハメハが鮮烈な強さで制した04年ダービーも、今日のような真夏日を思わせる熱い1日だった。最高傑作の息子は11年前の父と同じように、まぶしい太陽に負けないくらいの輝きでダービーを勝利し、父のつくったレコードタイムを0秒1更新。そして、キングカメハメハはNHKマイルカップ→ダービーの変則二冠だったが、ドゥラメンテは皐月賞→ダービーの正統クラシック二冠。現時点では父に並んだ、いや、一歩超えたとも見ることができるだろう。

 となると、父が最後まで歩むことができなかった秋競馬。ドゥラメンテの狙いはどこに定められるのだろうか。三冠か、それとも凱旋門賞か――?

 サンデーレーシングの吉田俊介代表は「しばらく様子を見てからになりますね」と、すでに登録を済ませてある凱旋門賞挑戦へ肯定も否定もせず。堀調教師も同じスタンスだが、「個人的な意見」と前置きしたうえで、「もっと馬が完成してから行きたいという気持ちがあります。完成はまだまだ先だと思いますから、大事に育てていきたいですね」と語っている。

 ならば、菊花賞での三冠獲りということになるが、ネオユニヴァースでトリプルクラウンを逃しているミルコは「馬の次走はオーナーと堀先生が決めることだから僕は分からないけど、3000メートルはちょっと長いかもしれない」という見解。一方の凱旋門賞に関しては「日本馬がまだ勝っていないから、すごく勝ちたいですね。ドゥラメンテはすごく走る馬。チャンスあります!」と前向きだ。

 ダービーの結果を受けて英国のブックメーカーが凱旋門賞2番人気のオッズをつけているという報道があったように、ドゥラメンテのこの秋の動向は、日本競馬界を飛び越え、世界の競馬サークルの大きな関心事の1つとなるだろう。そして、父から受け継いだ血だけでなく、ご存じの通りこの二冠馬は、曾祖母ダイナカール→祖母エアグル―ヴ→母アドマイヤグルーヴと続く国が誇る名牝一族の出身。個人的な意見としては、まさに日本競馬史を代表するニューヒーローとして、世界を舞台に大暴れしてほしいものだ。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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