阪神・梅野がエースの信頼を得る方法 若返るセ捕手を野口寿浩が解説(後編)

スポーツナビ

開幕マスクをかぶり、正捕手定着が期待された梅野(左)。だが、ここ数試合はベンチを温める日々が続く 【写真は共同】

 シーズン前の予想では上位進出が予想されていた阪神と広島、そして一時は首位に立ちながら9連敗で一気に沈んだ東京ヤクルトは、いずれも20代の若手捕手が開幕マスクをかぶり、チームの中心を担いつつある。各球団の巻き返しに欠かせない彼らの長所と課題について、前編に続きヤクルト、阪神などで活躍した野口寿浩氏に解説してもらい、名捕手の条件についても語ってもらった。

阪神・梅野は能見をうまくリードできるかがバロメーター

 開幕前は優勝候補にも挙げられながら、序盤から大きくつまずいた阪神。昨年、大卒1年目にして92試合に出場し、7本塁打を放った梅野隆太郎には、正捕手として大きな期待が首脳陣、ファンから寄せられた。だが、今季はチームの低迷と同じく自身の成績も低迷。4月中旬からはベテランの藤井彰人らとの併用が続いている。

――巨人の小林誠司捕手と同じくらい期待が高い梅野捕手ですが、いかがでしょう?

 確かに球団からかかる期待は小林かそれ以上でしょうね。僕が在籍していたころ(2003〜08年)は生え抜きの正捕手がいませんでした。(1990年代中盤の)山田勝彦さんか、関川浩一さんが在籍していたころまでさかのぼらないといないんですよ。なので、「この子(梅野)を一人前にしないといけない」と、和田(豊)監督も言っていました。

――4月中旬からエースのメッセンジャー投手、能見篤史投手の登板時には藤井捕手が使われています。

 自ら出番を手放したんですね。去年メッセンジャーは「梅野しか投げたくない」と言っていましたが、歯車が狂ったのでしょう。相手チームも捕手の配球を研究しますから、それでやられた気もします。頭の中にそれを上回るものがない。他球団に追い越されちゃった状態なのでしょう。

――エース2人の信頼を回復させる方法はあるのですか?

 メッセンジャーとは通訳を介さなければいけないので、うまくコミュニケーションをとれませんが、今度は指でとってほしいです。投げたい球を一発で出せ、ということですね。メッセンジャーの場合は考え方に筋が通っているので、過去の投球を研究する必要がありますね。

 能見はオールマイティーに投げられる投手なので、配球が大事になります。研究された梅野ではしんどいので引き出しの多い捕手がいいと思います。今後の梅野は能見と組んで結果をコンスタントに出せるかが成長を測る物差しになると思います。

――送球などのディフェンスはどうでしょう?

 肩は平均レベルなので捕ってから投げるまでの速さを上げることですね。ワンバウンドは必死に捕っている気はしますが、結果はあまり出てないかな。阪神もメッセンジャー、能見をはじめ、落ちる球をメインに使う投手が多いですから、うまくならないといけません。

広島・會澤の課題はボール球を使った配球

 今季から就任した緒方孝市監督の下、プロ10年目にして正捕手の座をつかみ始めたのが広島・會澤翼だ。ここまで42試合中25試合にスタメン出場(石原慶幸は17試合)し、打率3割2厘、2本塁打、11打点、守ってはチーム防御率リーグトップの投手陣をリードしている。

――會澤捕手は10年目にしてレギュラー捕手に定着し始めました。どのようなタイプの選手でしょうか?

 彼は攻撃型ですね。打撃から出始めた捕手です。ただ、課題はいかに投手陣の心をつかめるか。今季から黒田(博樹)が入って、うまく勉強している途中でしょう。

――最近は石原捕手と交互に起用されています。

 これは推測ですが、黒田と前田健太はストライクゾーンで勝負するタイプですね。この2人に會澤はすごく合うと思います。逆に野村(祐輔)のように多彩な変化球を低めに集めて、見せ球も使うタイプにはパ二ックになるのかもしれません。今後はボール球を使った配球の引き出しを増やすことも課題でしょう。だから、そういう投手やジョンソンのような外国人が先発するときには石原が起用されていると思います。

――盗塁阻止率が1割3分3厘とやや低い数字になっています。

 めちゃくちゃ肩が強い選手には見えないので、彼の場合は特に投手との共同作業が重要となります。とはいえ、投手には走者に気を遣わせず、打者と勝負させる必要があります。(12日の巨人戦で)堂上(剛裕)にタイムリーを打たれましたが、(1死一塁、1ボール2ストライクから)1球外す様子で(やや外側に會澤が構えたが)、前田が投げミスをして打たれました。外すなら外す、勝負するなら勝負する、ではっきりしないと、走者と打者両方の勝負に対して悪影響が出ますね。 

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