トップ4に返り咲いたユナイテッド 任務を遂行したファン・ハールの評価
強豪としての復権を匂わせる
トップ4返り咲きを果たしたマンチェスター・ユナイテッド。上位陣との対戦成績も五分で復権を匂わせた 【写真:ロイター/アフロ】
リーグでのトップ4対決は2勝2分け2敗。敗戦はチェルシーとマンチェスター・シティに惜敗(0−1)した今季「2強」とのアウェーゲームで、シティ戦は前半に退場者を出した10人での戦いでもあった。デイビット・モイーズ前体制下の昨季は、リバプールを含むトップ4とのリーグ戦で1勝2分け5敗だったのだから、順位と同様に強豪としての復権を匂わせる。
対照的にアーセナルは今季トップ4同士の対戦で1勝のみ。強豪対決での芳しくない成績はかねてからの問題点だ。2列目の充実度はプレミア随一。アレクシス・サンチェスは期待通りの即戦力となり、メスト・エジルも昨季とは違って後半戦での著しい失速がなく、引き分けに持ち込んだ今節マンチェスター・ユナイテッド戦ではアーロン・ラムジーがチーム最高の出来を見せた。
だが、同点ゴールは敵のオウンゴール。1トップのオリビエ・ジルーは2度の貴重なチャンスをものにできなかった。中盤中央は、うれしい誤算と言うべきフランシス・コクランの台頭はあるものの、そのパートナーを適材適所とは言い難いサンティ・カソルラに任せなければならない状態。アンデル・エレーラにノーマークで先制のボレーを打たれたように、ペア・メルテザッカーがリーダー格の最終ラインには隙があり、背後のGKは後半戦ナンバー1のダビド・オスピナと前任者ボイチェフ・シュチェスニーのどちらでも心許ない。10年間続いているトップ4維持が限界の日々に終止符を打つためには、元エースで現解説者のティエリ・アンリが指摘しているように、チームを縦に貫く「背骨の入れ替え」が必要かもしれない。
新戦力で貢献度が高いのは2人だけ
アーセナル戦で先制ゴールを決めたエレーラ。新戦力の中で数少ない高い貢献度を示したひとり 【写真:ロイター/アフロ】
そして、期待外れの面々に関しては指揮官にも責任の一端がある。選手自身のコンディションに問題があったことは事実だ。プレミア史上最高の約112億円を要したアンヘル・ディ・マリアは、移籍直後のリーグ戦5試合で計3ゴール3アシストの好スタートを切ったが、13節ハル・シティ戦(3−0)でハムストリングを痛めて約1カ月のブランクを余儀なくされた。約56億円で世界最高値の10代DFとなったルーク・ショーはフィットネス不足で出遅れた。期限付き移籍だがネームバリューは最大級のラダメル・ファルカオは、膝にメスを入れた長期欠場後という事情があった。
とはいえ、指揮官の起用法が彼らの窮状を強めた感は否めない。ファン・ハールは、プレシーズンから注力した3バック制をなかなか捨てようとはしなかった。経験の乏しいウイングバックで攻守に中途半端だったショーは適応に苦しんだDF陣の1人。終盤戦では、チームは敗れたが個人としては傑出した出来を示した33節チェルシー戦のように実力の片鱗を窺わせているが、その背景には本来の左SBとしてプレーする機会が増えた事実がある。
手探り状態で陣容が定まらず
システムや起用されるポジションが定まらず、ディ・マリアは本領を発揮することができなかった 【写真:ロイター/アフロ】
最前線はロビン・ファン・ペルシーにこだわりすぎたのではないか? 最終的には古巣と対戦した今節でもベンチスタートを命じる厳しさを見せているが、昨秋辺りにウェイン・ルーニーをエース扱いしていてもよかった。実際、トップ4復帰への勢いを増した今年2月後半からの連勝は、MF役が多かったルーニーがファン・ペルシーの故障で本職のFWに戻った変化によるところが大きい。
ルーニーの中盤起用には、当初「FWとしてはファルカオが格上」と公言していた指揮官の意向もあったことを考えれば、そのファルカオにより多く先発の機会を与えてもよかった。「コンディションは戻っている」という、大物FWによる昨年末の発言は強がりとは思えず、1月17日の第22節QPR戦(2−0)での無得点などは不運の一言。ネットを揺らせなかったこと以外はほぼ完璧で、チームの3−5−2が機能不全だった前半からゴールに迫り、ハットトリックを達成していても不思議ではなかった。