体操NHK杯で見せた田中、加藤の成長 その先の団体戦金メダル獲得のために

折山淑美

加藤は冷静な体操を貫き3位

けがの影響でDスコアは落としていたものの、跳馬ではロペスをしっかり決めた加藤 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 一方、今年2月に右親指を痛めて練習を積めず、このNHK杯まではDスコアを落として確実な演技で結果を残すことを目標にしていた加藤は、日本代表チームの水鳥寿思監督が「ここで失敗してはいけないと冷静に考えてやっている判断力と調整力はすごい」と評価するように、冷静な体操を貫き通した。

 Dスコア6.700点でまとめた最初のゆかは、ていねいな演技で全日本とほぼ同じ15.400点を獲得してスタートすると、続くあん馬とつり輪では全日本より少し落とした14.500点と14.550点だったが、Dスコア6.000点のロペスを行った跳馬では着地でわずかに動いただけで、Eスコア9.350点で15.350点を獲得する演技をみせた。

 そして平行棒では着地をピタリと決めて15.300点を出し、最後の鉄棒も14.750点でまとめて合計を89.850点とし、総合で内村、田中に次ぐ3位となったのだ。
「今は6割か7割でやっている状態。跳馬は良かったが、それ以外は納得できる演技ができなかった」と話す加藤。今回のDスコア合計は37.800点だったが、「ケガをする前は39点近い演技構成で練習をやっていたので。次の種目別(6月20日、21日開催、東京・国立代々木第一体育館)でうまく挑戦できれば」と、世界選手権へ向けての意欲を口にする。

団体戦での「0.1点」を雪辱するために

跳馬ではリ・シャオペンを決め、鉄棒でも圧巻の演技を見せた内村。すべては「0.1点差」に泣いた世界体操団体戦で雪辱するためのものだ 【末永裕樹】

 そんなふたりの最大の目標は、昨年「0.1点差」で中国に敗れて2位となった世界選手権団体で、悲願の金メダルを獲得することだ。

 森泉コーチは「内村が今年跳馬でリ・シャオペンに挑戦しているのは、個人総合も考えてのものだが、団体戦で金メダルを獲りたいという意識が強いからだと思う。自分が0.1点以上上げれば、去年の差をひっくり返せるし、それをやることによってほかの選手もDスコアを上げてくると思っているはず」と言う。

 田中は「予選をトップで通過することが団体の金メダルを獲るための重要な条件だと思う。だからこそ6種目で争う個人総合の力を上げなければいけないと考えてそれに取り組んできた」と話す。加藤が冬場の練習でDスコア合計39点近い演技構成の練習をしてきたのも、そんな思いがあるからだろう。

 内村を筆頭とした3人のレベルが上がれば、それだけ団体で優勝するための残り3人の選択条件の幅は広がってくる。さらに来年に迫ったリオデジャネイロ五輪で5名、2020年東京五輪で4名に制限される厳しい戦いへも向けて、選手たちの意識もより高まってくるはずだ。

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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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