ヤンキース浮沈の鍵を握る田中将大 スリリングなゆえ、興味深い今後の動向
復帰の遅れで心配なブルペン陣への影響
ア・リーグ東地区1位を走るヤンキース。投手陣に不安定要素が多いだけに田中の早期復帰が待たれている 【写真は共同】
端的に言って、近い未来のポイントは2つ。まず、いつマウンドに戻ることができるのか。そして、復帰後にどんなピッチングをするのか。
前述の通り、投手陣はここまでチーム防御率3.34と健闘しているとはいえ、ピネダ以外の先発陣ではC.C.サバシアが0勝5敗と不調で、ネーサン・エオバルディ、アダム・ウォーレン、チェース・ウイットリーも不安定。おかげでブルペンの登場機会が増え、ベタンセス、ミラーの負担が心配される事態になっている。
「(長期間のリハビリは)必要ないと思いますけど、しっちゃかめっちゃかのピッチングをしていたら(試合で)投げさせてはくれないと思う。ある程度しっかりと投げられて、自分自身も首脳陣の方々も納得する形じゃないとだめだとは思うので。ちゃんとした形で戻れるようにやっていくだけです」
8日にヤンキー・スタジアムでそう語っていた田中にとって、現実的には6月上旬あたりが復帰のメドとなっていくのではないか。
しかし、これが何らかのアクシデントでずれ込むようだと、他の先発陣を我慢して使わざるを得なくなる。ウォーレン、ウイットリーあたりは徐々に馬脚を表すことも予想され、その際にはブルペンをはじめとする投手陣全体へのさらなる影響は否定できない。その一方で、もちろん大事な田中に無理はさせられないだけに、首脳陣は慎重な判断を余儀なくされるに違いない。
復帰後もスプリッターを多投するか?
「4月中に最も多くのスプリッターを投げたのはアルフレド・サイモン(タイガース)、田中将大、マイク・ペルフリー(ツインズ)、ジェーソン・マーキー(レッズ)、ミゲル・ゴンザレス(オリオールズ)、ティム・ハドソン(ジャイアンツ)。この6人はすべて利き腕のじん帯に異常を抱えた経験がある」
『スポーツ・イラストレイテッド』誌のトム・バードゥッチ記者がそう記していたのをはじめ、スプリッターとケガの多さを結びつける指摘は後を絶たない。
そんな中でも、田中は一部の米メディアが声高に叫ぶトミー・ジョン手術を回避し、使い手の少なくなった決め球を投げ続ける。時代に逆行するような路線を行く背番号19とヤンキースの周囲には、今季は開幕時から多くの不確定要素が渦巻いていた。開幕から約1カ月半が経ってもその状況は変わらず、それどころか、先行きを読むのがさらに難しくなっている感すらある。
今からさらに1、2カ月後に、田中とヤンキースがどんな位置にいるかは分からない。スリリングであるがゆえ、余計に興味深い。ニューヨークの波乱の日々は、まだまだ続いていきそうな予感が濃厚に漂い始めている。