W杯2次予選、E組に入った日本の展望 日程と対戦国は「悪くない」組み合わせ

川端暁彦

シリアを侮るべきではない

シリアと直近で対戦したのは11年のアジアカップ。川島の退場があったものの、2−1で勝利した 【写真:ロイター/アフロ】

 では、日本の入ったE組(日本、シリア、アフガニスタン、シンガポール、カンボジア)について具体的に見ていこう。

 最大のライバルは第2シード国でもあるシリアだろうか。直近の対戦は11年のアジアカップカタール大会で、このときは2−1で日本が勝利を収めた。不可解な判定でGK川島永嗣が退場し、最後は本田圭佑がど真ん中にPKを決めて勝った試合と言えば、思い出す方も多いのではないだろうか。

 過去の対戦成績をトータルで見ると、6勝1分(FIFA基準による。JFA基準では7勝1分)となって相性が良さそうにも思えるが、1996年のアジアカップで激突した際も11年同様に2−1の辛勝だった。伝統的に武闘派のサッカーを展開するタフなチームであり、若年層の日本代表もこの国と当たるときはコンタクトプレーで苦戦を余儀なくされてきた。FIFAランクは126位(15年4月9日発表)と低いが、政情不安の国は親善試合を組めないがゆえにポイントを稼げず、自然とランクが落ちていくものなので(14年はたったの3試合しかしていない)、数字をそのまま彼らの力と受け取るべきではない。シリアのホームゲームは中立地での開催となりそうだが(ちなみに国内リーグは継続している)、侮るべきではない相手だ。

 そして、第3ポットからはアフガニスタンが同居した。今年に入ってからこなした試合はパキスタンに1−2で敗れた親善試合のみ。日本との直接対決も51年の1試合のみ(2−0で日本勝利)と参考にできる材料は乏しい。14年の親善試合でクウェートやタジキスタンと1点差ゲームをしていることから決して弱くはなさそうだが、アジア基準でも強豪とは言い難い。

消耗の少ないスケジュール

 そして第4ポットからはシンガポール、第5ポットからはカンボジアが同組に入ってきた。シンガポールとは過去に何度も縁があって、通算18勝1分3敗(FIFA基準。JFA基準では20勝1分3敗)。直近の対戦は04年のW杯ドイツ大会予選。このときはホームで1−0、アウェーで2−1と勝利しているが、いずれも辛勝。大激戦の末に藤田俊哉のゴールで辛くも勝ち切ったアウェーマッチなどは、残念な結果に終わっても何ら不思議はない試合展開だった。今回も特にアウェー戦には細心の注意が必要だろう。

 カンボジアとは過去2戦して2勝だが、いずれも70年代の対戦であり、まるで参考にはならない。1次予選ではマカオにホームで3−0勝利、アウェーでは1−1ドロー。もちろん油断は禁物だが、東南アジア勢の中でも総合力の落ちるチームではある。また東南アジア勢と当たる際に一番の懸念材料は過酷な気候による消耗だが、カンボジアとのアウェーマッチは幸いにも11月。乾季で雨もほとんど降らないし、気温も日本の同時期と比べればかなり暑いが、過酷というほどではない。

 一方、6月の対戦(日本にとっての初戦となる16日)となったシンガポールは、何月に当たっても大体暑い。むしろ日本が暑くなってくる時期である6月に当たれるのは、寒暖差が少ない分だけコンディションへのダメージが少なくて良いのではないだろうか。

チーム作りを並行して戦う難しさ

ハリルホジッチ監督はチーム作りを並行しながら、アジアで勝ち抜く必要がある 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 6月16日から始まるW杯への道。「特にアウェーではかなり自信をもって臨まないといけない」とハリルホジッチ監督が言うように、広大なアジアを舞台にする戦いは過酷を極める。加えて今回は新監督就任早々の試合ということもあって、チーム作りと並行して予選を戦っていく難しさも出てくるに違いない。それを乗り越えながら、より強く、よりたくましい日本代表へと生まれ変わっていけるかどうか。それは予選の成否だけでなく、その先に待つ舞台での成功も左右することになるだろう。

「私の口にはいつも勝利という言葉が存在します」と語る指揮官の下、新生日本代表がアジアの海へと漕ぎ出す。2年を超える航海を経て、遠くロシアの地に至ること。それが絶対のノルマであることは、今さら言うまでもない。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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