三者三様の精神状態で迎えるCL準々決勝 スペイン勢で4強に進むのはどこか!?

主力選手が戻り安定感を取り戻したレアル

主力選手がけがから復帰をするなど、レアル・マドリーはシーズン終盤に向けて調子を上げてきている 【写真:ロイター/アフロ】

 レアル・マドリーとアトレティコのダービーを占うのはさらに困難だ。ただ数日前まで風前の灯だった逆転優勝の可能性が再燃したレアル・マドリーの方が、精神的に良い状態でこの決戦を迎えると言うことはできる。

 カンプノウのクラシコで敗れた際には、全てが終わったかに思われた。だが優れた洞察力を持つカルロ・アンチェロッティは、シーズン終盤に向けて好調時のフットボールとフィジカルコンディションを取り戻すべく努めてきた。そしてその成果は、ここに来てはっきりと見て取れるようになってきている。ヘセ・ロドリゲス、ルカ・モドリッチに続いてハメス・ロドリゲスが復帰し、主力選手は軒並みそろった。ガレス・ベイルも調子を上げつつあり、クリスティアーノ・ロナウドは再びゴールを量産しはじめ、セルヒオ・ラモスが故障から回復したことでディフェンスラインも安定感を取り戻している。

 またグラナダ、エイバルらモチベーションを保ちにくい格下チーム、質の高いポゼッションスタイルで高い評価を得ているラージョ・バジェカーノらとの試合で選手たちが見せた真剣な姿勢は、シーズンの大詰めに向けて彼らが高い集中力を保てていることをよく示している。

 だが火曜にビセンテ・カルデロンで対戦するのは、近年最も厳しい戦いを強いられてきた相手である。昨季のCL決勝では終了間際の同点弾を機に逆転勝利を収めたものの、敗戦まであと一歩のところまで追いつめられた。そして今季はリーガとコパ・デル・レイ(国王杯)、スペイン・スーパーカップと6度も対戦して2分4敗と一勝も挙げていないだけでなく、2月のリーグ戦では0−4の大敗を喫している。

アトレティコも3位を維持する好成績

堅固な組織力を見せるアトレティコは、アルダ・トゥランを中心としたボールポゼッションで試合を組み立てる 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 一方のアトレティコには、いまさら隠すものなど何もない。クラブ史上最も愛されたアイドルの一人であるディエゴ・シメオネの手で作り上げられたチームは、バルセロナとは違って華麗なプレーなどには興味を示さず、シンプルかつダイレクトにゴールを目指し、相手にゴールを決めさせないことに専念している。選手全員が毎試合やるべきことを明確に理解しているのがこのチームの最大の強みである。

 今季もアトレティコが戦う集団であることに変わりはない。ジエゴ・コスタやティボ・クルトワ、フィリペ・ルイス(共にチェルシー)らの放出によって生じた穴は、可能な範囲で行った戦力補強(とりわけフェルナンド・トーレスの復帰は、ピッチ上のイレギュラーなパフォーマンス以上に大きな影響をもたらしている)、堅固な組織力、そしてコケやアルダ・トゥランを中心としたボールポゼッションの向上によって補っている。

 昨季ほどのハイペースを保つことはできていないものの、ここまで成長著しいバレンシアを抑えて3位を維持できていることは、上位2チームとの大きな経済格差を考慮すれば十分に評価できるものだ。

 歴史的な敵対関係に加え、現在の両チームは国内外でタイトルを争う直接のライバルでもある。あまりにも多くのものがかかっているマドリーダービーの行方を占うのは、やはり極めて難しい作業である。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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