侍ジャパン事業会社トップが描く青写真 「『!』が生まれる会社にしたい」
「侍ジャパン」は危機を打破する手段
情熱的に侍ジャパン事業に取り組んでくれているという小久保監督を中心に、NPBエンタープライズでは秋に行われるプレミア12での優勝へ向け、サポートを続ける 【Getty Images】
われわれの使命は侍ジャパンブランドの確立と収益の確保です。この2つを同時に実現するために設立しました。私たちは野球界を背負って仕事をしているんだと思っています。もちろん危機感を持っています。その危機を打破する手段として、侍ジャパン、日の丸で野球界を結束していきます。
――そういう意味では侍ジャパンの役割は重いですね。
そうです。野球ほど大規模な伝統あるスポーツ文化はほかにないと思います。一昔前はもっと野球が身近だったように思いますし、もっと普段の会話に野球が出てきていたように感じます。それが無くなったのは残念だし悔しいです。だから、もう一度、野球が素晴らしい文化だと、日本国民に感じてほしいですし、後世に伝えていかなければと思っています。
――その一歩が世界一奪還ということでしょうか?
今年のプレミア12で優勝すること。優勝して世界に日本の“野球国力”を発信すること。つまり、日本が世界の野球の中心にいることを世の中に示したいと思っています。世界一を狙えるチームスポーツはなかなかないですし、今回は世界一の瞬間を生で観戦できる可能性があるので(決勝は東京ドームで開催)、ファンの皆さんにも「世界一を狙う」という気持ちでいてもらいたいですし、一緒に「素敵な夢」を見ることができたらうれしいです。
――そのためのNPBエンタープライズの取り組みを教えてください。
私たちは監督をバックアップすること、そしてファンの皆さんにワクワク感を共有できるような仕掛けをしたいと思っています。もちろん、スポンサーの人、メディアの人にも応援してもらえる侍ジャパンにしていけなければならないです。みんなが「自分の侍ジャパン」と思えるようになれば良いですね。ですので、選手選考などに対してももっと意見を言ってほしいと思います。自分の大事なこと、関心のあることだから、良いことも悪いことも意見が出て、熱くなれるのではないでしょうか。阪神ファンや巨人ファンが自身の阪神論、巨人論で激論を交わすようにです。そういう存在に侍ジャパンをしていきたいので、野球に関する熱量を上げる試みをしていきたいですね。
――今後、野球のグローバル化が進展するにつれて、侍ジャパンの世界進出も考えていますか?
もちろん考えています。アジアにしても、オセアニアにしても、ぜひやりたいですよ。少なくとも日本と米国を熱狂させているスポーツですから、他国でも通用するはずだと思っています。ちゃんと魅力を伝えていければ、野球振興は可能ですよ。そのためにも、世界で野球に携わる人を増やしたいと思っています。
「!」が生まれる会社にしていきたい
今村氏は会社としても魅力ある企業を目指している。「入社したい企業ナンバー1にしたい」と意欲的だ 【スポーツナビ】
プロとアマチュアを扱う、スポーツの株式会社はおそらく、NPBエンタープライズが世界で唯一の存在ですよね。だから、「パイオニアになろう」とよく社員に言っています。人は「初めて」や「最も」という言葉が好きですよね。ですので、何事にもチャレンジする組織にしていきたい。プロ野球の歴史は80年ありますが、されど80年なので、野球が生き残っていくためにも新しい発想をもっと取り入れていかなければならないでしょう。もっとフロンティアスピリッツを前面に出していきたいですね。
「野球界のために」という前に、野球はファンの方が喜んでいることが前提だと思っています。私たちはサービス業だという思いで、ファンの方が拍手してくれる、喜んでくれることを実施していきます。
――新しい発想を持ち込むのは難しいこともあると思いますが。
エンターテインメントの原点は、過去の経験では味わったことのないことを経験した時に湧き上がる「驚き」や「感動」だと思っています。ですので、野球に関わるすべての人に「!」を与える会社にしていきたいと思っています。「NPBエンタープライズは“何か新しいものが生まれそう”な予感がする」と言われる会社にしたい。社長としては、「面白いことができる」「人が集まってくる」会社にして、入社したい企業ナンバー1にしたいと思っています。
<了>
(取材・構成:森隆史/スポーツナビ)
今村司(いまむら・つかさ)プロフィール
今年1月に侍ジャパン事業会社「NPBエンタープライズ」社長に就任した今村司氏 【スポーツナビ】