箭内道彦のジャージ研究所 芋煮会を語る
【カラダにいい100のこと。】
箭内 「いわきでオールスターゲームがあった際、猪苗代湖ズとして出させていただいたんです。ブルペンのところからずっと試合を見ていたんですが、途中、松井稼頭央選手のファールボールがコロコロ……って転がってきて。渡辺俊美(TOKYO NO.1 SOULSET)がそれを取って『やったー!! 取ったー!』って。そこで、来年の芋煮会は野球にしようって決まったんです」
――実際にやってみてどうでしたか?
松田 「野球だけだったら、選手を応援するという形だと思うんですが、そこに音楽が加わるとどうなるのか、想像もつきませんでした。でも、やり終わって思ったのは、何か決められていることにはめ込む形よりも、誰もやったことのない、どうなるか分からないところにみんなで向かっていくことって、やりがいがあるなぁということ。それはお客さんも同じだと思いました」
箭内 「ブラスバンドとかポンポン隊とか、仕込んだり雇ったりしていないんです。チケット買ってくれたお客さんが、みんな自主的に始めてくれたことなんです。みんな受け取るだけじゃなくて、一緒に作りたいって思い始めたタイミングだったのかもしれませんね」
【カラダにいい100のこと。】
松田 「昔は、箭内さんの無茶ブリがこないように、遠巻きで見ていようと思ったこともありましたけど(笑)、震災以降、自分ができること以上のことをやらないと力にならないというのを、みんなで共有してからは、どんな役回りでも楽しんでやったらそれが力になると思っています」
箭内 「ミュージシャンも、お客さんの顔をちゃんと見るということが、たまには必要なんじゃないかなと思うんです。自分の声がどう届いて、誰をどんな笑顔にしているのか。毎日やるのは負担だけど、たまには近くで顔を見ることで、自分たちが届いている実感を感じてほしかった」
【カラダにいい100のこと。】
箭内 「2014年が終わって、また野球やってほしいという声がすごく多いんです。でも違うことをやりたいという自分もいて(笑)。でも2014年やってすごく思ったのは、これ例えば“みんなで掃除”とか、“草むしり”とかでもすごく盛り上がるんだろうな、ってこと」
松田 「誰かが言ってましたよ、『もう音楽いらないんじゃないの?』って(笑)。最後に一曲みんな歌うだけでも盛り上がると思いますね。まぁ願わくば音楽も大きい存在であってほしいですが」
箭内 「僕たちがこれをやっている理由としては、福島にこんなものがあって、ずるいな、うらやましいなって思ってほしい。それによって、うちも負けねぇぞっていう県が出てきてほしい。でも一番楽しいのは福島にある!ということが、震災前から思っていたけど、いま必要なことなんじゃないかなと思う。福島のお客さんがね、『福島に生まれてよかった』って言うんですよ。考えちゃうことたくさんあったと思うんだけど、今日があってよかったって思ってもらいたい。そういう使命感がありますね」
箭内 「前回ジャージ作ったときに、一番好きなピンク色と、その次に好きな黒色使っちゃったからさ。金色にしました。目立つから気に入ってます」
(写真/石渡朋、文章/宮原未来)
■やない・みちひこ
福島県郡山市出身。数々の広告キャンペーンを手掛けるクリエイター。『月刊 風とロック』発行人。「LIVE福島」実行委員長、ロックバンド「猪苗代湖ズ」のギタリスト。
■まつだ・しんじ
福島県東白川郡塙町出身。ロックバンド「THE BACK HORN」、「猪苗代湖ズ」のドラマー。