欧州メディアが伝えた日欧野球 オランダも「五輪復帰」に熱視線

中田徹

ヨーロッパ視点では大入りイベント

第2戦、デカスターのホームランなどで完勝した欧州代表。欧州での普及度だけでなく、欧州野球のレベルの高さも世界にアピールした 【Getty Images】

 この2試合は、東京ドームに半分ほどの入りだった。日頃、プロ野球を見ている日本人からすると、盛り上がりに欠けるものだったかもしれない。しかし、欧州代表の勝利を知らせるNOS(オランダの公共テレビ局)のウェブサイトは小見出しに「2万3000人の観衆」と載せたぐらい、ヨーロッパ視点からすると大入りのイベントだった。IOCに対するアピールとして肝心なのは、テレビや報道写真に映る“絵”である。1階席さえ埋まっていれば、迫力と盛り上がりのある映像や写真が生まれてくる。

 第1戦の翌朝、3月11日付の『フォルクスクラント』紙は「野球は五輪種目に返り咲くために全てを尽くす」という大見出しの記事を掲載している。

「日本はベースボール・クレージーの国。IOC会長のトーマス・バッハは、五輪種目に関しフレキシビリティを持ったプログラムを認めている。東京五輪は野球にとって大きなチャンスだが、確実に開催種目になる保証はない。さらに空手も競技種目に加わることを狙っている。野球界はW杯を11年いっぱいでやめ、新たに今年の秋から“プレミア12”を開催する。開催都市のひとつが東京なのは(筆者注:五輪のことを鑑みても)決して偶然ではない。グローバル・ベースボールマッチに参加する欧州代表チームの移動費や滞在費は、すべて日本野球機構によって賄われている」

普及度、欧州野球のレベルもアピール

 IOCを納得させるためのポイントは、そのスポーツの世界的な普及度と、実際に五輪が行われた場合のレベルである。今回、グローバル・ベースボールマッチがオランダやイタリアといった単独国ではなく、スペイン、ドイツ、フランス、チェコ(+ベルギー人監督)も加えた混成チームにしたことは、多少なりとも普及度のアピールになっただろう。しかも世界ランキング1位の日本を破ったのだから、ヨーロッパもレベルの高い野球をしていることもアピールできたはずだ。

 試合翌日のオランダ各紙の報道は皆無に等しい。『アルヘメーン・ダッハブラット』紙は短信として「ヨーロッパが日本に勝つ。オランダ代表監督スティーブ・ヤンセンに率いられたヨーロッパは第2戦をデカスターのホームランもあって6対2で勝った。初戦は世界ランキング1位の日本が4対3で勝った」と伝えたぐらい。『デ・テレフラーフ』紙に至っては結果すら載せなかった。件の『フォルクスクラント』紙も第2戦翌日はグローバル・ベースボールマッチに触れなかった。

 しかし、オランダの新聞は速報性を度外視した、ルポルタージュ系の記事も多い。昨年、ヤンセン監督が五輪に対する思いをNOSにぶつけたように、今後、グローバル・ベースボールマッチを五輪に関連付けて振り返る記事がきっと出てくるだろう。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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