ラグビーW杯出場へ…復活を誓うマフィ 日本代表HCから贈られたジャージ

斉藤健仁

突然の大ケガ「ラグビー生活も終わってしまうかも」

2月28日には稲垣啓太(右)とともに、日本代表キャップ授与式に参加した。 【斉藤健仁】

 マフィは、そんな思いをすぐに試合で爆発させた。昨年11月、マオリ・オールブラックス(ABs)との第1戦、途中出場ながら後半にトライを挙げて、そのポテンシャルの高さを披露し、続くマオリ・ABsとの2戦目にも出場。さらに欧州遠征のルーマニア代表戦で初キャップを獲得、続くグルジア戦でも豪快なランを見せた。日本のシーズン終了後は、スーパーラグビーへの挑戦の可能性もあり、順調にキャリアを積んでいくかと思われた。

 そんな矢先のことだった。好事魔多し、である。昨年12月、遠征から日本に帰ってきて2試合目のリーグ戦で、左の股関節脱臼骨折の大ケガを負ってしまう。まるで交通事故にあったかのような症状で、9カ月後のW杯出場が危ぶまれるほどだった。マフィも「自分の夢も希望も日本でのラグビー生活も終わってしまうかもしれない……」と落ち込んだことさえあった。

 すぐに手術をし、25日間ほど入院した。そんなマフィをNTTコムのロブ・ペニーHCやコーチ、仲間が見舞った。またジョーンズHCも「9月19日 南アフリカ戦」と書いた日本代表のジャージを持って行き励ました。「彼らの顔を見られたことで勇気づけられました。強くありたいと思いました。そしてあきらめないと自分に約束しました」(マフィ)

「ターゲットはW杯に出場することだけ」

昨秋のルーマニア戦で力強く突破するマフィ。鋭いスピードと激しさが武器だ 【斉藤健仁】

「W杯で対戦する南アフリカ代表は暴力的な激しさを持っている。大きな選手に立ち向かっていく選手が必要」とマフィの存在を欲しているジョーンズHCは、退院後はマフィの家も訪れ、毎月、ケガの回復具合を確認。1月には「早く治って代表のスコッドに名を連ねることを願っている。だが、今のところ実際には難しい」と言っていたが、今回の第二次候補選手にリストアップした。
「(マフィのケガは)良い方向に向かっています。じきにフィットしてくると思いますし、そうなることを望んでいます」(ジョーンズHC)

 マフィも「とても治りが早いと聞いています。すでにジョギングは始めていて、もう少しで走れると思う」というように回復は想像以上に順調のようだ。そんなマフィに「今年のW杯に出場したい?」とズバリ聞いた。すると「以前のようなプレーができるか不安はありますが、自分が戻ったときに何が起こるか見てみたい。ターゲットはW杯に出場することだけです。時間が解決すると思います」と言葉を選びながら慎重に答えた。

秋には世界最高の舞台で大暴れを

「将来的にはラグビーのスーパースターになりたい!」と目を輝かせる 【斉藤健仁】

「焼肉が好き。5年くらい日本に住んでいたので日本人になったね(笑)」などと時折、日本語でも話すマフィは、身体の大きさと反比例するほどシャイで、恥ずかしそうな表情を見せながら質問に答える。小さい時からの夢を変えて、日本で新たな夢をつかもうとする中での大ケガだった。まだ大好きなラグビーボールを持って走れない。こうした苦しい現実も受け入れて、壁を乗り越えようとしている。「今は急がずリハビリに集中していきたい。ラグビーでは良いときと悪いときがある。悪いときはチャレンジの時期です」(マフィ)

 かつてオールブラックスで大活躍したWTBジョナ・ロム−に憧れた少年は、今でも「将来的にはラグビーのスーパースターになりたい!」と目を輝かせている。今秋、世界最高の舞台で桜のジャージを着て、大暴れすることを願っている。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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