スーパーラグビーに挑戦する稲垣啓太 「あの日本人ヤバイな、と言われたい」

向風見也

食生活と「初速の一歩」における工夫

豊富な運動量でパナソニックの2連覇に貢献した 【写真:築田純/アフロスポーツ】

 日本以上に力勝負が厳しい舞台のクラブで、力勝負が必須のプロップのレギュラーを日本人がつかみにいく。難しいことは承知の上だ。かねてから取り組むサイズアップと「初速の一歩」の質の向上で、どうにかあらがいたい。

「去年のシーズンは112、3キロでしたけど、いまは117キロ。120キロまでは増やします。食事の意識は変わりましたね。昔は体脂肪をカット、という感じで油を節制した。でも、血液検査をすると、油が普通の大人の3分の1しかありません、これじゃ筋肉はつきません、と。ココナッツオイルは、身体に悪い油を外に出してくれる。よく、芸能人も摂ってますよね。あとはフィッシュオイル、えごま油……。摂りながらウェイトトレーニングをするようになってから、身体が変わった感じはあります」

――相手とぶつかる瞬間の「初速の一歩」。海外の力自慢に勝つための工夫ですね。タックルに入る際の強いインパクト、今季のトップリーグ終盤戦でも示しています。

「去年から採り入れたけど、実際にやれるようになったのは今年からです。(話し相手と距離を置いてから)一気に相手に近づく。ぱん、と(間近に近づく)。ここからスピードを落とします(さらに近づく)。ここまで来たら、速く、相手よりも低い姿勢になる……」

「プロップだからスキルがないというのは、嫌」

パナソニックの2連覇を喜ぶ稲垣(前列左)。「自分の能力はまだこんなものではない」と語る 【赤坂直人】

 関東学院大では、下級生の頃から4年時の主将就任が既定路線とされていた人だ。考えること、話すことは苦にならない。暗がりのもと、言葉を重ねてゆく。

「思い返せば、昔は身体がでかいだけで何でもできた部分があった。ただ、トップリーグ、代表に入ると、自分のでかさは一般的。いままでやってきたことは通用しなかったわけですよ。そのなかで、スキルが大事だと。プロップだからスキルがないというのは、嫌なんです」

「僕は結構、自分の能力はまだこんなものではないという感じを持っているんです。プロップという目立たないポジションで、どうアピールするか。やらなくていいことはひとつもない。やってみて、合うと思ったものを吸収していく」

 決意を明かした2日後の2月1日、東京は秩父宮ラグビー場でトップリーグ2連覇を達成した。「単純に手続きが間に合わなかった」と、離日は22日から参戦の日本選手権終了後の予定だ。

「日本のなかで満足はできない。ワールドレベルでは、自分はまったくの知名度ゼロですよね。向こうで『あの日本人、ヤバイな』と言われるようになりたいです」

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著者プロフィール

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行う。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。

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