アギーレ解任も所詮は対岸の火事 スペインやメキシコでのリアルな反応

池田敏明

有名選手の動向を報じたメキシコ

メキシコでは、ガビら注目選手がいつ出廷する予定なのかを取りまとめた内容が報じられた 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 一方、アギーレの母国であるメキシコは、解任発表の時間帯が3日の未明に相当していたこともあり、電子版では速報はされなかった。『レコルド』紙や『エスト』紙の電子版、スポーツ総合サイト『メディオティエンポ』などでアギーレ解任が報じられたのは現地時間の3日朝(日本時間の同日21時前後)以降で、しかもテキストはスペインの記事を複写したもの。こちらも後追いの記事はほとんどない。

 唯一『レコルド』紙の電子版がアギーレの出廷日時について予測する記事を配信しており、「2月27日に出廷することになるだろう」としている。ただし、この記事もアギーレに特化したものではなく、「(疑惑の試合が行われた)当時、アギーレの下でプレーし、現在はトルーカに所属するパラグアイ代表DFパウロ・ダ・シルバは3月2日、現在アトレティコ・マドリーでキャプテンを務めるMFガビやマンチェスター・ユナイテッドのMFアンデル・エレーラは3月5日に出廷する予定だ」と、注目度の高い人物がいつ出廷する予定なのかを取りまとめた内容となっている。

アギーレ個人への注目はあるものの……

日本では後任人事の予想など大きく報じられているものの、スペインやメキシコではさほど大きくは報じられなかった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 日本では後任人事の予想やJFAの責任問題など、各サイトがこの一件にまつわるさまざまなニュースを配信し、また識者たちもそれぞれの意見を発し、議論を呼んでいる。しかし、スペインでは前述したとおりバルセロナの一件がより大きな注目を集めているのに加え、自己中心的なプレーで批判を浴びたガレス・ベイル(レアル・マドリー)をめぐる報道やルイス・フィーゴ氏が立候補したFIFA(国際サッカー連盟)会長選関連のニュースなど、サッカーファンの関心を引きそうな話題が多い。八百長疑惑との関連があるとはいえ、遠く離れた国の代表監督が解任されたニュースなど大きく取り上げられるべきものではなかった。

 また、メキシコにおいても冬の移籍マーケットでクルス・アスルに加入したパラグアイ代表FWロケ・サンタ・クルスや、左足半月板を損傷して2カ月間の戦線離脱となったカルロス・ベラ(レアル・ソシエダ)の容体、緑基調から黒基調へと大胆にイメージチェンジしたメキシコ代表ユニホームのほうが閲覧者にとって引きの強いニュースであり、4日に国内リーグの試合が行われたこともあって、アギーレの解任が大きな話題になることはなかった。2月25日に関係者の出頭が始まれば、スペインでは進捗があるごとに報道されるだろう。メキシコにおいても、実際にアギーレが出廷すればそれなりに大きく扱われるはずだ。しかし、その段階では既に「日本代表監督関連のニュース」ではなく、八百長疑惑関連のニュースやアギーレという一個人絡みのニュースになっている。いくら多少の関わりがあったとは言え、彼らにとっては日本代表の監督人事など所詮は対岸の火事なのだろう。

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著者プロフィール

大学院でインカ帝国史を研究していたはずが、「師匠」の敷いたレールに果てしない魅力を感じて業界入り。海外サッカー専門誌の編集を務めた後にフリーとなり、ライター、エディター、スペイン語の翻訳&通訳、フォトグラファー、なぜか動物番組のロケ隊と、フィリップ・コクーばりのマルチぶりを発揮する。ジャングル探検と中南米サッカーをこよなく愛する一方、近年は「育成」にも関心を持ち、試行錯誤の日々を続ける

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