新車続々…F1合同テストの注目点は? シーズン開幕へ準備着々と進む

田口浩次

ホンダのエンジン開発承認の行方

ホンダにとってエンジン開発承認は死活問題。FIAの決断に注目が集まる 【写真:ホンダ】

 オフシーズンに注目を集めた話題といえば、やはりホンダにまつわるニュースだろう。実は14年シーズンから採用されているV6ターボと回生エネルギーを組み合わせたパワーユニットに関しては、1.6リットルV6ターボで最高回転数が1万5000回転、レース中の使用燃料は100キロまで、直噴インジェクションの採用といった具合に、規制に加えて、コスト高騰を避けるために今後のエンジン開発にも制限がかかっている。

 少し難しい話になるが、説明すると、14年シーズンスタート時、各エンジンメーカーはFIA(国際自動車連盟)に対して、エンジン認証の申請を行った。この時点でFIAはエンジン全体から66のパーツ(F1ではトークンと呼んでいる)に分類し、15年エンジンは、14年エンジンをベースに32トークンだけ変更が許されている。毎年トークンは減っていき、7年かけてエンジンの開発を凍結しようする規定がある。

 ここで問題なのが、15年から参戦するホンダは、2月28日の段階でエンジンの承認が行われ、そのエンジンのまま15年シーズンを戦わなければならないとされていた。しかし、ライバルチームは32トークンの改良が認められている。そこでホンダは意義を申し立て、現在落ち着きそうな妥協点として、開幕時点でライバルエンジンメーカーが残しているトークン数の平均値(例えばメルセデスが開幕時点で10トークンを残し、フェラーリが11トークン、ルノーが0トークンと仮定した場合、ホンダがシーズン中に与えられるトークンは7トークンとなる)を与えるという案がある。

 まだ、これは確定していないのだが、マクラーレン・ホンダにとっては死活問題なので、どんな形で落ち着くのか注視しておきたい。

ヘレステストのポイントは周回数

王者メルセデスはテスト走行でどんな走りを見せるのか。周回数、タイムが見極めのポイントとなる 【Getty Images】

 さて、2月1日からスタートする15年シーズン前の合同テストは3回を予定している。1日〜4日がスペインのヘレスサーキット、19日〜22日がスペイン・バルセロナのカタロニア・サーキット、そして26日から3月1日が再びカタロニア・サーキットとなっている。

 テスト走行では、各チームとも秘密を持ったままなので、実際の速さは開幕戦の予選まで分からない、とよく言われている。どのくらい燃料を積んでいるのか、タイヤのコンディションはどうなのかなど、テスト内容は各チームで違っているからだ。今だから明らかにできる話題だが、ケータハムなどはパワーユニットがまともに作動しないため、テストでは回生ユニットのERS(エネルギー回生システム)をほぼ使わずに走行していた、なんて笑えない話もある。しかし、実のところ、テストでも見るべきポイントは多い。少なくとも強豪チームの予想はつく。

 まず、ヘレステストで見るポイントは周回数だろう。昨シーズン、ルノーエンジン搭載車はパワーユニットのトラブルが多発して、まともに周回数を稼げなかった。それだけで、予定している開発プログラムが大幅に遅れてしまう。開幕戦でレッドブルがそれなりの速さを取り戻していたのは、彼らに豊富な予算があり、ルノーもレッドブルだけに絞って開発を優先したという事情がある。そのため、ヘレステストでは、どれだけ初期トラブルが少ないかを見極めるポイントとなる。

バルセロナでは後半のタイムに注目

 次に2回あるバルセロナテストでは、それぞれ4日間ある後半2日間のタイムに注目したい。バルセロナテストでは、予選シミュレーションやレースシミュレーションといった実戦向きなテストプログラムが組まれていて、タイムをごまかすために、ストレートで少しアクセルを戻すようなことはしても、マシンそれぞれが持つ速さのポテンシャルを垣間見ることができる。

 また、どんなに壊れやすくても、マシンの信頼性を高める作業と、速さを高める作業を比較した場合、間違いなく大変なのは速さを増す作業であると、どの開発エンジニアも口をそろえる。たとえエンジンブローなどがあっても、タイムが出ているマシンには化ける可能性があるわけだ。

 それを踏まえてテストで見ていきたいのは、まずはメルセデスの走り。昨年のチャンピオンで、信頼性をさらに高めているはずなので、間違いなく安定した走りを見せるはずだ。それに対して、マクラーレン・ホンダやフェラーリ、レッドブル、さらにはプライベーター(自動車メーカーではないチーム)筆頭のウィリアムズがどのようなタイムを出し、周回数をこなしていくのかに注目したい。

 マクラーレン・ホンダの勇姿は……間もなく明らかになる。

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