強い「神鋼ラグビー」が帰ってきた理由 チームを変えた“ゴールド革命”

斉藤健仁

ミーティングは1日に3回行うことも

トップリーグのトライ王に輝いた新人WTB山下楽平 【斉藤健仁】

 ディフェンスだけでなく、プレーの判断に迷いがなく、そしてリアクションが早い。また戦略的に戦っていると感じる。それはゴールドHCが時間、点差、エリアによってどういったプレーを判断し、選択するか、落とし込んでいる証拠だ。それを支えるミーティングは、昨シーズンより回数、時間も増加した。全体、FW、BKと30分以上で、1日に3回行うことも(フロントローのみスクラムミーティングもある)。日本代表HO木津武士は「日本代表のエディー・ジョーンズHCよりも長い」と感じている。

「改善すべき点が多くあったのは事実。細かいところまでカバーするにはミーティングが必要ですし、プロフェッショナルとして、上位と対戦するには時間と労力をかけないといけない」(ゴールドHC)

 試合があった次の週の月曜日のBK(バックス)ミーティングはこうだ。BKで試合に出ていた全員に個々の良かったプレーとそうでなかったプレーが編集され、送られる(全員にiPadが配布されている)。そして、その映像を見て自分の意見を考えた上で、コーチ陣、控え選手も一緒になってディスカッション。さらに、次の試合に備えて、コーチ陣とインサイドBKのレギュラーで「どう強みを出して戦うか」を話し合っている。

橋本主将「必ず優勝できる」

橋本主将(左)は「勝つために誰も妥協することがなくなった」と力強く語った 【斉藤健仁】

 ゴールドHCは、首位で通過したリーグ戦をこう振り返った。「ブロックごとに目標をセットして、達成できたら次の新しい目標をセットして積み重ねていった。その結果が自分たちのスタンダードを上げることにつながった。こうした中で選手たちが、どう勝っていくか感じてもらえていればうれしい。勝つためのプロセスには、細かいところまで詰めていくことが必要です」。まさしく「勝敗は細部に宿る」という言葉を実践、それが選手、チームの自信につながった。

 FL橋本主将も「ラグビーに対する姿勢、意識が、もう一段階高いレベルになったと感じています。80分間、勝つために誰も妥協することがなくなった。この1年、やってきたラグビー、スタンダードが出せれば、必ず優勝できる」と語気を強めた。

ゴールドHC「みんなで祝うことができれば一番」

プレーオフ準決勝では清宮監督(右)率いるヤマハ発動機と対戦する 【斉藤健仁】

 しかし、ゴールドHCが「このままでは何も残らない」というように、本当の勝負はこれからだ。1月24日(土)、大阪・近鉄花園ラグビー場で、神戸製鋼はプレーオフ準決勝で2ndステージ4位のヤマハ発動機と対戦する。指揮官はプレーオフに向けて「何かを大きく変えるには遅すぎる。うまくいっていることを磨いた方が良い」とディフェンスの整備に余念がない。

 また「先を見ることが一番危険」(ゴールドHC)と準決勝に集中している。指揮官は「ヤマハ発動機はFWが強く、競争力のあるチーム。ただ、前回(40対10で勝利)と同じようなディフェンスと、相手のFWを起点とした攻撃をするチャンスを奪うことができれば、同様のパフォーマンスをすることができる」と自信ものぞかせた。

 そんなゴールドHCは「家族の問題」で、このプレーオフを最後に、日本を離れて南アフリカのスーパーラグビーチームのシャークスのディレクター(総監督)に就任する。「いくつか自分を駆り立てるものがあります。神戸製鋼も日本も本当に良くしてくれました。また神戸にとっても震災から20年目の節目の年です。プレーオフで良い結果を残して、みんなで祝うことができれば一番です」と、このときばかりは熱血漢もしみじみと語った。

 赤い軍団が「ゴールド革命」を完遂するまで、あと2勝となった。もともとHO(フッカー)という巨漢が冬空に舞い、有終の美を飾ることができるか。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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