中島裕之に重なるパイレーツ姜正浩の姿
日本人野手の未来も左右するその成否

精神的、肉体的なタフさにほれたパイレーツ

昨年、DeNAの春季キャンプに参加した姜正浩。メジャーでアジア人内野手の評価が下がる中、彼の成否が日本にも大きな影響を及ぼしそうだ
昨年、DeNAの春季キャンプに参加した姜正浩。メジャーでアジア人内野手の評価が下がる中、彼の成否が日本にも大きな影響を及ぼしそうだ【ストライク・ゾーン】

 ここで姜正浩と中島の日韓での成績を比べてみよう。姜正浩の韓国在籍9年間の成績は打率2割9分8厘、本塁打139本(年平均15.4本)、545打点(同60.5打点)、51盗塁(同5.6盗塁)。長打率と出塁率を合わせたOPSは8割8分7厘だ。

 一方、中島の日本での12年間の成績は打率3割2厘、本塁打162本(同13.5本)、738打点(同61.5打点)、141盗塁(同11.7盗塁)。OPSは8割4分3厘で、2人の率、そして年平均の本塁打、打点の数はとても似通っている。盗塁の数に差があるが、清家氏は「姜正浩は12年に21盗塁、13年に15盗塁しているのに、去年はセーブしていたのか、あるいはベンチが走らせなかったのか、盗塁が3個しかありませんでした。姜正浩は韓国国内ならトリプル3(3割30本30盗塁)も狙えます」と、中島同様に走れる選手だと話す。


 11年オフにポスティングによるメジャー挑戦を目指した中島は、独占交渉権を得たヤンキースとの交渉が合意に至らず、翌12年オフ、2年総額650万ドル(約5億5000万円)でアスレチックス入りした。当時、中島は30歳。それより3歳若い27歳の姜正浩が、4年プラス1年で最大1650万ドルという評価を受けたのは、「2年前の中島と比べた場合、相応な契約期間と金額」とナ・リーグ球団のアジア担当スカウトは話す。姜正浩は当時の中島に匹敵する選手ということだ。このスカウトはパイレーツが提示した金額について、「昨シーズンのホームラン40本という数にはインパクトがありました。たとえ韓国のレベルが米国、日本より下だとしても、韓国内では一流であるということ、そして彼が持つ精神的、肉体的なタフさにパイレーツはほれ込んだのでしょう」とした。

姜正浩の活躍にアジア人野手の未来が懸かる

 それでは姜正浩はメジャーでチャンスをつかめるのか。


 メジャーリーグ評論家の福島良一氏(58歳)はパイレーツの内野手事情についてこう説明する。


「ショートには昨年レギュラーを取った、メジャー有数の守備力を持つ、ジョーディー・マーサー(28歳)がいます。打率が2割5分5厘と打撃は良くありませんが、姜正浩が彼からショートのポジションを奪うのは難しいと思います。セカンドのニール・ウォーカー(29歳)は地元(ピッツバーグ)出身の人気選手で、昨年は自己最多の23本塁打を放っていますが、故障の心配があります。サードのジョシュ・ハリソン(27歳)はナ・リーグ2位の打率3割1分5厘を残しましたが、昨年がメジャー実質1年目の選手です。彼らが姜正浩の競争相手になります。ニール・ハンティントンGMが姜正浩と大型契約を結んだのを見ると、どんなことがあろうとメジャー25人のロースターには入れるでしょう。開幕から内野のユーティリティープレーヤーとして期待しているのだと思います。試合に出られるかは打撃でアピールできるかどうかです」


 韓国プロ野球からメジャー初進出の野手となった姜正浩。彼の成否に韓国では注目が集まるが、日本球界も無関係ではないと、前出のナ・リーグ球団アジア担当スカウトは語気を強める。

「最近の日本人野手は期待されても活躍していないので、メジャースカウトの中では評判が落ちています。“アジア人の内野手はメジャーでスタメン入りするのは難しい”という固定観念ができつつあるのです。そのレッテルを貼られないためにも姜正浩には頑張ってほしいとアジアのスカウトは皆、思っています。そうしないとアジアの野手に次のチャンスはありません」


 また、福島氏も「姜正浩の成績は日本人の評価に影響すると思います。アジア全体の問題です」と話す。


 清家氏は渡米前の中島を思い出しながら、姜正浩に期待を込めた。

「中島は日本で5年連続3割を打ち、ゴールデングラブ賞も取って、守備にも自信をつけていました。北京五輪、WBCでも良いバッティング、良い守備をして、メジャーでも活躍してくれると期待していました。しかし、開幕前にケガをしたことでうまくいかなかった。中島のケガの原因は分かりませんが、環境、言葉、移動など苦労も多かったでしょう。日本よりも国が狭い韓国の選手にとって、その負担はもっと大きいかもしれません。姜正浩にはまずはキャンプで良いスタートを切ってほしいと思います」


 昨年2月、姜正浩は球団間の交流の一環として、横浜DeNAの宜野湾キャンプに招待参加。そこで初の実戦となる2月11日の紅白戦、最初の打席で中越え2ランを放ってみせた。「これまでと違う環境は緊張感があって得ることが多い。集中力が高まります」。その時、そう話した姜正浩。今度は米国の地で好スタートを切ることが、自身のアピールはもちろん、アジア人野手の未来にもつながっていくだろう。

室井昌也
室井昌也

1972年、東京生まれ。韓国プロ野球の伝え手として、2004年から著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』を毎年発行。韓国では2006年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当し、その他、取材成果や韓国球界とのつながりはメディアや日本の球団などでも反映されている。ストライク・ゾーン取締役社長。

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