大谷翔平、“二刀流”進化への確信 必要不可欠な投手としてのレベルアップ

週刊ベースボールONLINE

まずは投手としての起用を主眼に

天性の打撃センスで昨季、11本塁打をマークした。今年はどこまで数字を伸ばすか楽しみだ 【写真=高原由佳】

 この局面を乗り越えれば、自然と驚異的な成績を残す可能性が高い。登板試合数は昨季とは大きく変わることなく、25試合前後となりそうだ。1試合平均のイニング数を増加させることができれば、投球内容が良くなり、ゲームメークできていることの証明にもなる。その結果、勝利数、防御率、三振数などが、飛躍的に向上すると推察できる。故障さえなく1年間を先発ローテーション投手、しかも大黒柱としての地位を確立できれば、沢村賞の候補にもなり得るだろう。昨季同様に、栗山英樹監督は今季も継続して投手に主眼を置いた起用法を念頭に置き、二刀流を運用していく方針を掲げている。「まずは先発投手。それが機能したら次は打者でDH。それもできたら守備に就く」。その言葉から推察できるのは、野手としての出場機会が停滞する可能性が高くなることだ。

 昨季の打者としての出場試合数は86試合で、そのうち先発出場は53試合、計234打席だった。1年目の打席数は204打席だった。投手調整などで制約もあり、現実的に野手での出場には限界が出てくる。投手としては、昨季のように規定投球回に到達することは、アクシデントさえなければ見込める。しかし、打者としての規定打席到達は極めて厳しいと言わざるを得ないだろう。この2年間、ともに200打席台の前半にとどまったことを考えても、今季も同程度、あるいは幾分増加するかもしれない。昨季は打率2割7分4厘と1年目よりも3分以上上げて、本塁打数も増加したが、その数字から爆発的な成績の向上は望めないのではないか。

 相手球団、投手の対策、配球、傾向などを生かし、これまでのキャリアハイをたたき出す可能性は十分にある。ポテンシャルと完成度の高さは、入団時から投手より打者と評価されている。今季も一定の水準で底上げはなされるだろうが、投手ほどの圧倒的な変化は起こらないだろう。栗山監督は登板翌日の野手出場の可能性を示唆してはいるが、それも通年で行うことは厳しい。

 今季もDH起用が基本プランになると見られる。出場機会が限られれば、打撃成績は必然と収まるべき数字になると見るのが常識的な見方だ。投手としてたたき出した昨季の成績が、すでに突出しているのだから、多くを求めるべきではないのかもしれない。

 大谷は年始のあるインタビューで二刀流について「生きがい」として自身の中で位置付けていることを明かした。野球、プロでプレーする上での大きなモチベーションが、2つの顔を持つ自分のオンリーワンの個性なのだろう。二刀流という響きでは両者は並列に見えるが、3年目を迎えて観点を少しずらして見ると明確になるかもしれない。発展途上の投手を極めながら、一流の水準にある打者としての価値もグラウンド上で解き放つ。15勝&20本塁打なのか、はたまた20勝&30本塁打なのか。周囲は期待し、分かりやすい数字を求める。ただ、異論、反論が渦巻いた二刀流で走り出した原点に立ち返れば、プロのトップレベルで両立させている現実が尊い。それを3年目も続けている20歳の一挙手一投足を純粋に――。それが、唯一無二の大谷翔平の至極の楽しみ方なのかもしれない。

(文=高橋和詩)

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