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野球の人材中継点として機能する豪州
MLB、NPBを夢見て腕を磨く選手たち
豪州野球のメッカ・ブリスベンのホロウェイフィールド
豪州野球のメッカ・ブリスベンのホロウェイフィールド【石原豊一】

 オーストラリア(豪州)と言えば、スポーツの世界では、テニスの全豪オープンの開催地や、サッカー日本代表の好敵手として知られているだろう。しかし、アテネ五輪で「長嶋ジャパン」を準決勝で破り銀メダルを獲得したことや、元阪神のジェフ・ウィリアムスに代表される助っ人選手など、この国は野球を通じても日本と強い関わりをもってきた。


 今回、この国のプロ野球、オーストラリアン・ベースボール・リーグ(ABL)を訪ねたが、豪州野球を取り巻く状況からは、世界の野球が今まさにメジャーリーグ(MLB)を頂点としたスカウティングのネットワークに組み入れられていることが分かった。

プロアマ一体の独特な構造

 ABLは、MLBから75%の出資を得て2010年に開幕したウインターリーグである。そのため、豪州独自のリーグというよりは、MLB傘下のマイナーリーガー育成、豪州人選手のスカウティングの場として機能している。

 今シーズンの登録選手は、199人(昨年11月25日現在)。うち、1軍に当たる「アクティブ・ロースター」の上限は24人である。これに加え、各球団は10数名の「リザーブ・ロースター」を抱えており、これを2軍にあたる地元のローカルクラブに預けている。


 プロ・アマの境界が明確な日本人には理解しにくいが、ABLは、ジュニア段階からピラミッド型に形成されている国内600クラブの最高レベルという位置づけになっている。この構造の下、ABLのプロ選手は、それぞれ「ローカル」チームにも所属している。つまりは、アマリーグで活躍した選手が、ABLにピックアップされ、スカウトの目にかなえば、MLB球団との契約にこぎつけることができるのだ。


 ABLでは地元選手の多くが他の職を兼業している関係上、チーム全体で集まるのは試合のある週末だけという球団も多い。例えば、シドニー・ブルーソックスの場合、全体で集まるのは、木曜日から日曜日の公式戦と、火曜夜の練習だけで、月・水曜はオフになる。オフにコンディションを整えたい選手は、必要に応じてローカルチームで練習し、ベンチ入りロースター外の「リザーブ」の選手も、ローカルチームで実践を積んでいる。

豪州で冬を過ごし、北半球に向かう選手たち

すっかり荒れ果てたパームメドウズのグラウンド。かつて中日がキャンプを行った面影はない
すっかり荒れ果てたパームメドウズのグラウンド。かつて中日がキャンプを行った面影はない【石原豊一】

 2014年シーズンをMLBロッキーズ傘下のマイナーリーグでプレーした、ブルーソックスのデイビッド・カンディラスはこう言う。


「オフの間もABLでプレーしていると、(MLBの春季)キャンプでは全開モードになっているからね」


 彼もまた、ローカルクラブに所属している。彼だけでなく、メジャーリーガーの中にも、ABLではプレーせず、参加の自由がきくローカルクラブでプレーする者がいる。日本では見ることのできないこのような風景も、ここではごく当たり前のことである。  


 また、この国に世界各地から集まる外国人選手は、チーム浮沈を左右する「助っ人」というよりは、スキルアップを目指してやってきた「留学生」という捉え方をされている。彼らの存在が、プロアマ各レベルのプレーの質を上げていることは確かだ。そのことは、ローカルクラブでさえ、滞在先とアルバイト先を提供して外国人選手を迎えていることに表れている。

 しかし、彼らの多くは、ローカルクラブでの活躍を踏み台に、ABL、さらには他国のプロリーグとの契約を勝ち取るため、豪州に来ている。ABL球団からは給与の出ない「リザーブ」の外国人選手には、このような者が多い。彼らの中には、米国独立リーグでプレーしている選手や、スポーツ用品メーカーに勤めながら、副業で野球選手をしながら世界を渡り歩いている者もいる。

石原豊一

立命館大学大学院国際関係研究科修了。国際関係学博士。専門は、スポーツ社会学・スポーツ産業学。著書に『ベースボール労働移民―メジャーリーグから「野球不毛の地」まで―』(河出書房新社)がある。

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