松岡修造氏が語る2015年の錦織圭「世界中の解説者が優勝候補に挙げる」

WOWOW

ケガとのつき合い方

2014年シーズンは傷めた右足のケガとの戦いでもあった 【写真:ロイター/アフロ】

――錦織選手の2015年はどうような年になると?

 いろいろな捉え方があると思います。このまま勢いに乗って上昇気流に乗っていくか、もしくは停滞する可能性だってある、落ちていく可能性もある。3つ可能性があると思います。僕は上昇だけと言いたいです。でもそうならない可能性もたくさん秘めていて、それが「テニスツアー」だと思います。
 昔、僕が錦織選手に「グランドスラムだけ優勝すればいいじゃないか」という話をしたことがあります。当時はケガも多く、年間を通して戦える体ではありませんでした。ただ、彼は、年間を通して戦える体を作り上げようとした。彼は世界一を目指しているんです。
 世界のトップ選手でもテニスの調子が悪いときにどうするかが重要なんです。2015年は全米オープン以降のテニスができるかというと、これは誰も「できる」と断言できないです。なぜなら、必ず波がやってきます。ただ、悪かったときにどうやって錦織選手が新しい壁を破って、乗り越えることができるか、それが一番の鍵です。それによって彼の位置、ポジションが変わってくると思います。

――「グランドスラムだけ優勝すれば」という会話はいつ頃に?

 2年前です。ちょうど錦織選手がケガで苦しんでいて、一大会に出ると、次は棄権しないといけないとか、そういう状況で体が相当厳しい状態だったんです。やはり大事なのはグランドスラムで優勝する、そのためだけを考えてツアーも回るやり方もあると。僕の指摘はその時点では間違っていなかったんです。ただ、そのとき錦織選手は発見したんでしょうね。マイケル・チャン(コーチ)と共にプレーをしていく中で、自分のケガとの向き合い方、体の使い方だったり、話し合い方だったり。すごく彼が言った言葉で新鮮だったのは「ケガというのは友達だ」と。「分かち合える」と。だから、このケガの具合によって、やっていいかどうかがわかってきた。もちろんケガはあるでしょうけど、ケガがあっても戦える体になった、それが一番の進化じゃないですかね。

コート際でマッサージを受ける錦織 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

――ケガと上手に付き合っていく術を?

 ずっと体力トレーニングを続けてきたからこそ、2014年の結果があったんだと思います。いきなりできることではありません。
 今度は大きなケガをしないということが一番の課題です。僕が驚いたのは全米オープンの前3週間、ケガで錦織選手はテニスをしていなかったんです。ラケットを握っていないに近い。その状態でいきなり出て、決勝まで勝ち上がっていったということに僕は一番びっくりしたんです。錦織選手は「実は年始からずっと足が痛かった。手術をして痛さが和らいだのが良かった」と、はっきり言いました。それを聞いて、痛みがないとき、この人はとんでもない選手なんだと思いました。2014年に優勝したマドリード(5月)、バルセロナ(4月)の両大会は、彼は足が痛く、自然に動けていなかった。それが手術によって取れたから全米オープンでは自分のテニスができたという言い方をしていました。

――体調さえ維持できれば錦織選手のテニスはできると?

 そうですね。基本的にビッグ4がいても、それほど怖いビッグ4ではない。勝てない相手はいないわけです。一番のポイントはその後に続いてくる選手、グループです。そこで入れ替わってくるわけです。でも、その入れ替わってくる中でダントツ強い選手はいない。今回僕が全豪オープンで2週間現地に行こうと思ったのは、それでダントツに強い選手がいるかどうかを自分の目で確かめたいと思ったんです。僕は今のところいないと思っています。

全豪オープンでの戦い方

2014年の全豪オープンでは4回戦で6−7、5−7、6−7とナダル(スペイン)に惜敗した錦織 【写真:ロイター/アフロ】

――全豪オープンのカギは

 全豪オープンは年始にあるグランドスラムで「調整をする」ということが一番カギになる大会です。それはどれだけいい形でシーズンオフを休めたか、どれだけいい形で1年を戦う基礎(準備)ができているかということ。
 錦織選手にとっては、ファイナルに出場することで、いつもより休む時間が少なくなった。ただ、他の選手を見てみますと、アジアの中で行われている国別のチーム戦みたいなものに多くの選手が出ていますし、そう考えて比較すると、「最も休めている選手」といってもいい気がします。プラス、日本ではなく、アメリカに戻ってしっかりマイケル・チャンコーチと合宿をやり終えましたから、いい形で(拠点の)フロリダの方に戻っている。トップ選手の中では最高の準備として入ってこれる選手だと僕は見ています。

――錦織選手は全豪オープンと相性が良い?

 基本的に暑さは苦手。錦織選手は暑さには強くないですが、それは昔から体が強くないっていうのと一緒で。ただ、オンとオフの使い分けが非常にうまい。プラスしのいでやっていけるタイプ。だから「暑さは好きですか?」って聞いたら「嫌いです」って答えるはずです。ただ、「試合を通してどうですか?」と聞いたら「強いです」という捉え方ができると思います。テニスに関しては暑さが好き。嫌いだけど、強い選手と僕は捉えています。 唯一怖いのは1、2回戦ですね。前哨戦を戦ってきますけど、全豪オープンは雰囲気やコート、ボールが違う。その中でシード選手ではない相手で、とんでもないテニスをしてくる可能性がある。相手は対錦織選手ってことで120パーセントでやってきますから、競る可能性もありえます。

錦織が頂点を極めるためには世界ランキング1位のジョコビッチ(セルビア)の壁も突き崩さなくてはならない 【写真:ロイター/アフロ】

――全豪オープンで注意すべき選手は?

 それは、みんな、出てくる選手全員が注意でしょうね。もちろん、トップ選手は要注意だとは思いますよ。
 誰か一人を挙げるとすれば、世界ナンバーワンのジョコビッチというしかないと思います。ただ、ナダルが休暇をとって手術をして戻ってくるという意味では、相当なハングリーさはあると思う。でも、昔のナダルのような強さは、あそこまでは今後は出てこないと思います。錦織選手サイドでいえば、十分可能性があるという捉え方です。
 繰り返しになりますが、錦織選手が優勝するということに関して、世界中で疑う解説者は一人もいないということです。

WOWOW番組情報(PR)

松岡氏はWOWOW全豪オープンの解説も務める 【スポーツナビ】

★全豪オープンテニス
2015シーズン最初のグランドスラムとなる全豪オープンテニス。初優勝を目指す錦織圭の戦いなど、現地の感動と興奮を圧倒的なボリュームで全14日間連日生中継!
2015年1月19日(月)〜2月1日(日)連日生中継[初日無料放送]

★錦織圭 世界の頂点へ!全豪オープンテニス開幕直前スペシャル!
2015年1月18日(日)午後0:15 ※無料放送

★錦織圭出場予定!クーヨン・クラシック
日本人初グランドスラム優勝を目指す、錦織圭が出場予定の「クーヨン・クラシック」を生中継。全豪の前哨戦として2015年を占う特別な4日間を全日程無料放送でお届け。
2015年1月13日(火)〜1月16日(金)連日生中継[すべて無料放送]

詳しくは、WOWOWテニスオンラインへ
http://www.wowow.co.jp/sports/tennis/

2/2ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント