ホッコータルマエ、ドバイ切符は譲れない=“叩き上げ”が今年こそ“統一王者”へ
前走4着、西浦師の笑顔の理由
ドバイで体調を崩すアクシデントがあった後だけに、前走JCBクラシックは4着とはいえ西浦師には大きな手応えが残るレースでもあった 【netkeiba.com】
「勝てなかったのは残念ですが、あそこまでのレースをしてくれて、とても嬉しかったんです。ドバイで体調を崩して、長く休養して。その後立て直して、初戦でここまで走ってくれるのかと。次に繋がる、いいレース内容だったと思います」
西浦調教師の言葉にあるように、ホッコータルマエは3月のドバイワールドカップ参戦後、体調を崩して現地の病院に入院している。初めての海外遠征、世界トップレベルの馬たちとの戦いに、疲れが出ても仕方のないことだろう。ホッコータルマエにとって救いだったのは、深刻な症状が出る前の、超早期発見で治療が出来たということだ。
「ドバイでは、ジャパン・スタッドブックの方にお世話になったんですけど、『いつもは馬房の窓から顔を出して外を眺めているのに、いつもの仕草と違う』ということで連絡をもらいまして、すぐに獣医さんに診てもらって。そうしたら、軽い腸炎を起こしているということで、ゴドルフィンの動物病院に入院して、治療してもらったんです。日本から一緒に行った通訳の方が細かくコミュニケーションを取ってくれましたし、たくさんの方の協力のお蔭で早期に治療出来ました。大ごとにならずに済んで、本当に感謝しています」
こうしてホッコータルマエは、当初の予定から1週間遅れて日本に帰国した。無事帰国してからはゆっくりと休養を取り、万全の態勢を整えてからJBCクラシックへと出走したのだ。それでも、使いつつ成長して来たこの馬にとって、約7か月の休み明けというのは大きかったのではないだろうか。その分、一度使った効果も大きな期待が持てる。
「この馬は本当に賢い馬で、色々なことを理解しているんですけど、前走で負けたことが相当悔しかったみたいなんです。でも落ち込むというわけではなくて、反対に闘志に火がついた感じで。カリカリと入れ込むのではなく、もっと走りたい! という気持ちを我慢しながらトレーニングしているんです。使って体も柔らかくなっていますし、しなやかな走りをしていますよ」
タイトルを獲ってドバイへ繋げたい
来年またドバイに行きたい、そのためにもチャンピオンズカップは勝利あるのみだ 【netkeiba.com】
「前走後は疲れもなく、調教も順調に来ています。1週前追い切りをしっかりとやって、動きは申し分なかったですから、あとは調整程度の追い切りで十分ですね。経験も豊富ですし、馬もレースだとわかっていますから、人間が心配して余分なことはしないようにしています」
ドバイでは体調を崩したホッコータルマエだが、見事に立ち直って、JRAGI制覇という新たな高みを目指している。そしてその先には、さらに大きな夢が待っているのだ。
「去年ケイアイレオーネで初めてドバイに行かせてもらって、結果は惨敗だったけれど、また来たい! と思いました。今年はホッコータルマエで行かせてもらって、また惨敗だったけれど、それでもまた来たい! と思わされます。やっぱり海外遠征というのは、人から聞いたり本を読んだりしただけではわからない部分がたくさんありますから。経験を積むことによって、何が必要なのか、どういうことを馬に課して行ったらいいのか、向うでしっかり調教するのか、それとも輸送の疲れを取って競馬に行くのか。色々と模索しないといけないので、1回より2回、2回より3回と思っています」
来年もドバイへ招待されるためには、日本国内での活躍が必須条件となる。その中でも、第1回チャンピオンズカップの結果は大きく影響するだろう。
「ここまで順調に来ているのが何よりです。大きなタイトルを獲って、来年のドバイへ繋げたいですね。招待を受けたら馬主さんと相談して、2年連続で行きたいと思っています。馬も環境に慣れて来るだろうし、力関係もわかって来ますから。しかも、来年はタペタからダートに変更するみたいですし、またチャレンジしたいです。ただ、行きたいと思っても招待されないと行けないですし、馬主さんの理解がないと行けないですから。そういう意味でも、世界を目指せる馬と出会えたことが、すごいことだと思っています。そういう馬を自分たちが管理出来ること自体が、本当にすごいことですから」
悲願のJRAGI制覇へ向けて、そして、もう一度ドバイへ羽ばたくために――ホッコータルマエの戦いは続いていく。(了)