メジャーの注目を浴びた柳田悠岐 和製ボンズが世界を驚かせる日は間近…

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王会長も驚くの飛距離

豪快な打撃だけでなく、高い身体能力を生かした守備も柳田の魅力。今季は初のゴールデングラブ賞を獲得した 【写真=早浪章弘】

 打席に立てば「全打席フルスイング」がモットーだ。それに誰よりもほれ込んだのがソフトバンクの王貞治球団会長。2010年秋のドラフト会議で2位指名された柳田だが、実は別の選手が指名される予定だった。それに声を上げたのが王会長。「(指名リストの中で)誰が一番飛ばすんだ?」と尋ねるとスカウトたちは「柳田です」と即答した。寸前のところで指名が切り替えられたのだった。

 遠くに飛ばす才能はプロ1年目から目を見張るものがあった。2軍戦だが、京都府・京丹後市の球場でバックスクリーンをライナーで越える一発を放っている。

「弾丸ライナーでどこまでも飛んでいく。それが理想の打球です。あれは僕の中で『プロイチ』ですね」

 プロ入団したてのころは強じんな上半身ばかりに頼るスイングをしていたが、徐々に体全体を上手に使えるようになってきた。確実性が上がり、4年目の今季に大きく開花。シーズンでは全144試合に出場を果たして、打率3割1分7厘(リーグ3位)、15本塁打、70打点、33盗塁(リーグ2位)と見事な成績を残した。

 7月3日の千葉ロッテ戦では、広いヤフオクドームのバックスクリーンすぐ右の上段まで届く一撃を放った。「あれはコトイチ(今年一番)」と自画自賛。観戦していた王会長も「あそこまで飛ばしたヤツは、ほかに見たことがない」と、世界のホームラン王をも大興奮させた。また、初出場したオールスターでも第2戦のMVPを獲得し、先日はベストナインとゴールデングラブ賞受賞の知らせも届いた。

ミスターをほうふつとさせるスケールと華やかさ

 だが、柳田は言う。
「自分なんてまだショボいっす」

 もはや口癖レベルで柳田から聞かれる言葉だ。

「(ゴールデングラブ賞について)場違いだなと思いました。ヤバい。自分はまだショボいので。一生の宝物です(笑)」

「(ベストナインについて)実感はありません。素晴らしい選手ばかりなのに自分を選んでもらって光栄です」

 88年生まれの26歳。田中将大(ヤンキース)をはじめ前田健太(広島)、坂本ら球界の中心となる世代だが、世間一般的には同年代の若者は「さとり世代」などと言われ、とかく、自分と取り巻く現実を客観視して大きなことを言いたがらないとされる。スターに上り詰めながらも、何か世間ズレしていない。それは柳田の魅力の一つでもあるのだ。

 それでも、最近は頼もしくなってきた。
「今年が良かったからといって来年も良い成績を残せるわけではない。一からの勝負です。まずはレギュラーをしっかりとれるように」

 3年やって一人前といわれる世界。地位は人を成長させる。
 今や、柳田は「空振りでもゼニがとれる」貴重なスターである。時代は違うが、長嶋茂雄をほうふつとさせるスケールの大きさと華がある。

 小久保ジャパンが目指す3年後のWBCのころは28歳。野球選手として絶頂期と言っていい年頃だ。
「大学生のころは、バリー・ボンズ(元パイレーツ、ジャイアンツ)にたとえられたこともあるんですよ」

「日本のボンズ」が世界を驚かす。

(文=田尻耕太郎)

柳田悠岐プロフィール

1988年10月9日生まれ。広島県出身。187センチ95キロ。右投左打。広島商高から広島経大を経て11年ドラフト2位でソフトバンクに入団。1年目のオフ、プエルトリコのウインター・リーグで経験を積み、12年は1軍で68試合に出場。昨季は右肩痛などの影響で1軍を離れる時期もあったが104試合に出場して自己最高の成績を残した。今季は144試合すべてにスタメン出場。

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