メジャーの注目を浴びた柳田悠岐 和製ボンズが世界を驚かせる日は間近…
王会長も驚くの飛距離
豪快な打撃だけでなく、高い身体能力を生かした守備も柳田の魅力。今季は初のゴールデングラブ賞を獲得した 【写真=早浪章弘】
遠くに飛ばす才能はプロ1年目から目を見張るものがあった。2軍戦だが、京都府・京丹後市の球場でバックスクリーンをライナーで越える一発を放っている。
「弾丸ライナーでどこまでも飛んでいく。それが理想の打球です。あれは僕の中で『プロイチ』ですね」
プロ入団したてのころは強じんな上半身ばかりに頼るスイングをしていたが、徐々に体全体を上手に使えるようになってきた。確実性が上がり、4年目の今季に大きく開花。シーズンでは全144試合に出場を果たして、打率3割1分7厘(リーグ3位)、15本塁打、70打点、33盗塁(リーグ2位)と見事な成績を残した。
7月3日の千葉ロッテ戦では、広いヤフオクドームのバックスクリーンすぐ右の上段まで届く一撃を放った。「あれはコトイチ(今年一番)」と自画自賛。観戦していた王会長も「あそこまで飛ばしたヤツは、ほかに見たことがない」と、世界のホームラン王をも大興奮させた。また、初出場したオールスターでも第2戦のMVPを獲得し、先日はベストナインとゴールデングラブ賞受賞の知らせも届いた。
ミスターをほうふつとさせるスケールと華やかさ
「自分なんてまだショボいっす」
もはや口癖レベルで柳田から聞かれる言葉だ。
「(ゴールデングラブ賞について)場違いだなと思いました。ヤバい。自分はまだショボいので。一生の宝物です(笑)」
「(ベストナインについて)実感はありません。素晴らしい選手ばかりなのに自分を選んでもらって光栄です」
88年生まれの26歳。田中将大(ヤンキース)をはじめ前田健太(広島)、坂本ら球界の中心となる世代だが、世間一般的には同年代の若者は「さとり世代」などと言われ、とかく、自分と取り巻く現実を客観視して大きなことを言いたがらないとされる。スターに上り詰めながらも、何か世間ズレしていない。それは柳田の魅力の一つでもあるのだ。
それでも、最近は頼もしくなってきた。
「今年が良かったからといって来年も良い成績を残せるわけではない。一からの勝負です。まずはレギュラーをしっかりとれるように」
3年やって一人前といわれる世界。地位は人を成長させる。
今や、柳田は「空振りでもゼニがとれる」貴重なスターである。時代は違うが、長嶋茂雄をほうふつとさせるスケールの大きさと華がある。
小久保ジャパンが目指す3年後のWBCのころは28歳。野球選手として絶頂期と言っていい年頃だ。
「大学生のころは、バリー・ボンズ(元パイレーツ、ジャイアンツ)にたとえられたこともあるんですよ」
「日本のボンズ」が世界を驚かす。
(文=田尻耕太郎)