初の大会を終えた21U代表の大義 国際舞台で育った世代がつなぐ球界の未来

室井昌也

国際大会にプロが出るのは当たり前

近藤と野村がともに印象に残るシーンとして挙げた第2回WBC決勝でイチローが放った勝ち越し打 【写真は共同】

 これらの過去の日本代表の戦いを、93年生まれの21U代表選手はどう見ていたのか。今回の代表で4番打者を務めた近藤は、最も印象的だった場面に第2回WBC決勝戦の延長10回、イチローが放ったセンターへの決勝タイムリーを挙げた。また中日のドラフト1位、野村亮介(三菱日立パワーシステムズ横浜)も同じシーンを挙げ、「ああいう場面で打てるというのはすごい」と話した。

 子供の頃からプロ選手が世界で戦う姿を見てきた21歳。14年前、五輪にプロが参加することは革命的なことだったが、彼らの世代にとって、国際大会にプロが出場することは当たり前になっている。

 世界の舞台で日本のトッププロが見せた姿は、海外の球児にも影響を与えていた。21U韓国代表の外野手、金仁泰は幼かった頃のシドニー五輪の記憶についてコメント。「自分と同じ左打者として、松中(信彦)選手の力強いバッティングが印象に残っています」

 また台湾の4番打者、王柏融は「北京五輪、WBCでの稲葉(篤紀)選手の活躍には、自分も左打ちの外野手なので注目しました」と思い出を語った。彼らの世代は、海外の選手が子供の頃から身近な存在だった。

 そんな21Uの選手たちが見据えるのは3年後、2017年の第4回WBCでの代表入りだ。21歳にとって、3年後はプロ6年目、大卒なら2年目。昨年の第3回WBCにおいて、プロ6年目で代表入りした選手には中田翔(日本ハム)が該当する。若手から中堅へと差し掛かり、チームの中心選手として大きく飛躍する時期だ。

18U、21U、WBCへつながる球界の未来

 21Uの選手は今大会を踏まえて、今後、どう進んでいくか。近藤は「大会通じて監督、コーチが4番として期待して使ってくれたが、みんなの気持ちに応えられる成績ではなかった。トップチームを目指すにはもっとレベルアップしなければならない。今回の経験は今後の野球人生につながる」と語った。

 また野村も、「アマとしてプロと一緒にプレーできるのはいい経験だった。この大会では技術的にフォームがバラバラでバランスを修正できなかった。悔しい大会だったが、(プロ入りする)来年につながると思う」と前向きに捉えた。

 今回の21U代表の中には北條史也(阪神)、笹川晃平(東洋大学)らの18U代表経験者もいた。彼らは各国の選手と再会を果たし、互いの成長を確認しあった。3年後のWBCでも同じように、今回の21Uメンバーが世界のライバルたちと顔を合わせるかもしれない。そこで見せる、高いレベルのプレー。そして、その姿に子供たちが憧れることで、野球界はさらに未来へとつながっていくことだろう。

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著者プロフィール

1972年東京生まれ。「韓国プロ野球の伝え手」として、2004年から著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』を毎年発行。韓国では2006年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当し、その他、取材成果や韓国球界とのつながりはメディアや日本の球団などでも反映されている。また編著書『沖縄の路線バス おでかけガイドブック』は2023年4月に「第9回沖縄書店大賞・沖縄部門大賞」を受賞した。ストライク・ゾーン代表。

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