和田監督がキャンプで見たいと言った男 期待の長距離砲・横田慎太郎

岡本育子

オフはないつもりで!

今季、2軍では1試合3本塁打を放ち、フェニックスリーグ、秋季キャンプでアピールというタイミングで腰の張りで離脱を余儀なくされた 【岡本育子】

 シーズンを振り返って「前半は……ヤバかった。後半は(2軍の)試合に多く出させてもらったことが大きいです。打席が増えて余裕を持てたというか、トータルで1本打てればいいかなと思えた。代打で出た時は初球から何でもかんでも振っていましたね」と苦笑い。確かに、どんな球が来ても思いきり振って、中村豊ファーム外野守備走塁コーチが「横田、落ち着け!」と三塁から声をかけることも(笑い)。

 やがて8月3日のオリックス戦(鳴尾浜)に待望のプロ1号! それがなんと満塁弾で周囲を驚かせたルーキーだが、同31日にはウエスタンリーグ11年ぶりでチーム17年ぶりという、1試合3本塁打で度肝を抜いた。しかも2軍の公式戦6本のうち1号以外は全部レフト方向である。9月には8試合連続安打も記録して、これからフェニックスリーグや秋季キャンプで猛アピール……という矢先に腰の張りが出て離脱。これはファーム首脳陣にとって大きな誤算だったかもしれない。

 今季はファーム打撃コーチとして横田選手を見てきた古屋英夫ファーム監督は「故障は残念。このあとはもう実戦ができないから。でも、良い素材を持っていますよ。ここ何年かの中では抜けている。ただしケガをしない体力をつけないと。オフはないつもりで! 書いといてね、オフはないって」と念を押された。

 八木裕ファーム打撃コーチは、後半にヒットが出始めた点を「プロのピッチャーのボールに慣れてきたこと。最後に結果が出たのは本人の能力という部分が多い。練習をたくさんするので、プロらしいスイングや身のこなしが少しずつついてきた。ここからが本当の勝負。オフにしっかりトレーニングして」と、やはりオフの重要性を説く。

1軍での活躍もそう遠くない

21U・W杯で活躍中の北條に触発され、来季の1軍を誓っている 【岡本育子】

 横田選手に来年の話を聞いてみた。「走ることが一番好き!」というだけあって、足も大事なセールスポイント。2軍の公式戦6盗塁(失敗3)はチームで荒木郁也選手の15、緒方凌介選手の8に次ぐ数字だが「少ない。全然満足していない」と口をとがらせる。そして「今年はただ走ればいいと思っていたけど、ピッチャーのクイックや配球も踏まえていきたい」そうだ。

「来年は1軍でやらないと!」。お、行ってみたいというのではなくて? 「はい、あの人がJAPANで活躍してるから」。あの人? 「背番号2の人」。なるほど、第1回IBAF 21Uワールドカップで台湾遠征中の北條史也選手のことだ。「新聞の1面に出ていて悔しいと思いました。あの人は来年きっと1軍へ行くでしょう? 負けていられない!」って北條選手は1つ先輩で、しかも内野手だけど……。まあ今季は何かと一緒にいることが多く、彼にとっては一番身近なライバルなのだろう。

 この無邪気な薩摩隼人が、甲子園のセンターを守っている姿やレフトスタンドへ放り込む打球を想像してみる。そう遠くない気がした。

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著者プロフィール

兵庫県加古川市出身。プロ野球ナイター中継や、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって30年以上。ウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それから阪神の2軍を取材するようになり、はや20年を超える。

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