宇佐美貴史は“ドラえもんストライカー” G大阪・浮沈の鍵を握る絶対的エース
すでに“ニューヒーロー”とは呼べないキャリア
現在22歳で、プロとしてのキャリアはすでに6年目を数える。高校2年時だった2009年、16歳でG大阪史上初となる飛び級でトップチーム昇格を果たすと、10年にはリーグ戦26試合に出場し7得点をマーク。この年のJリーグベストヤングプレーヤー賞(新人王)に輝いた。その後、バイエルン・ミュンヘン、ホッフェンハイムと2年間ドイツ1部でのプレーも経験。再びG大阪に戻ってきた昨季は途中加入ながら18試合で19得点をたたき出す活躍で1年でのJ1復帰、J2優勝に大きく貢献した。今季もチームの要として存在感を放っている。
遠藤「高いレベルですべてをこなせる」
「佐藤寿人さん(サンフレッチェ広島)とかフィリッポ・インザーギ(現ミラン監督)とか。僕はボール回しに参加して鋭いパスを出せる自信はあるけど、ストライカーの動きや点の取り方はもっと増やしていかないといけない」と課題を挙げた。
まだまだストライカーの域には達していないとでも言いたげな口ぶりだったが、MF遠藤保仁は「得点を奪うための能力をすべて兼ね備えていると思う。頭(ヘディングシュート)はそんなに得意じゃないと思いますけど、両足でゴールを決められるし、細かいステップだったり、シュートレンジの広さは日本のストライカーの中でもトップレベル。ゴールに向かっていく姿勢も非常に強いものがあると思うし、アシストもできる。高いレベルですべてをこなせるのが彼の特徴だと思います」と評価している。
宇佐美の調子とリンクした快進撃
2勝3分け3敗と黒星が先行する中、宇佐美がチームに戻ってきたのは4月26日・第9節の川崎フロンターレ戦である。通常、負傷明けの選手に関しては練習試合を挟み、状態をチェックするのだが、宇佐美の場合は練習で紅白戦を行っただけ。それでも、「十分やれている感じがあった」(長谷川監督)という手応えを得てベンチ入りさせ、後半27分にはピッチに送り出している。ただ、思うように結果はついてこず、チームはここから3連敗を喫した。
「ワンチャンスで一発食らわせることを求められている中で、結果が出せないのは自分自身の実力不足。コンディションを上げる必要があるので、そこは自覚してやっていきたい」(宇佐美)となかなか波に乗れなかったが、5月6日・第12節徳島ヴォルティス戦で今季初の先発出場を果たすと、自ら22歳を祝うバースデー弾を決め、4試合ぶりの勝利に貢献。そこから中3日で行われた第13節名古屋グランパス戦ではゴールはなかったものの、ペナルティーエリア内でのヒールパスからMF阿部浩之の先制点を演出した。
試合を重ねるごとに復調の兆しを見せ、溢れんばかりの才能が輝きを放ったのはリーグ戦再開後のことだ。7月19日・第15節ヴァンフォーレ甲府戦では「GKの位置とか分かっていたので浮かせば入ると思っていた。すべてイメージした通り」とDFに囲まれながら会心のループシュートで先制点を奪取。先制弾だけではなく、MF倉田秋のゴールをアシストする活躍で勝利に導いてみせた。その後もコンスタントにゴールを決め、調子を上げてきたエースとともにチームも10年ぶりの7連勝を達成。中断前の16位がうそのように破竹の勢いで白星を積み重ね、10月5日・第27節の鹿島アントラーズ戦で逆転勝ち(3−2)を収めたことで2位に浮上したのは記憶に新しいことだろう。