宇佐美貴史は“ドラえもんストライカー” G大阪・浮沈の鍵を握る絶対的エース

金子裕希

さまざまな“道具”でチームをけん引

岩下が“ドラえもんストライカー”と評したように、宇佐美はさまざまな“道具”を持っている 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 もちろん、G大阪の進撃は宇佐美だけの力ではない。再開後のリーグ17試合中9試合で完封勝利をもたらした守備陣の安定も大きい。それでも、大黒柱として最終ラインをけん引するDF岩下敬輔は、「前が点を取ってくれているから良い守備もできていると思います。(宇佐美は)いい刺激を与えてくれたと思うし、それによって競争意識、信頼関係が生まれたと思う」と攻撃だけでなく守備面にも好影響を与えていると語った。

「そんなエースにキャッチフレーズを付けるなら?」と、ふと岩下に聞いてみたところ、“ドラえもんストライカー”という答えが返ってきた。理由はこうだ。「いろんなプレーができるから。ゴールだけじゃなくてゲームメークもできますし、どの選手にも合わせられる。いろんな選手が得点できているのは貴史が引き出しているのもあると思う」

 岩下の言葉通り、宇佐美はさまざまな“道具”を持っている。ワールドクラスの高いシュート技術、局面を打開するドリブル、仲間のゴールをお膳立てするアシスト。トップでコンビを組む選手によってプレースタイルを変える柔軟性など――「あとは献身性という道具が出てくればね」(宇佐美)。そんな自虐的な言葉が出てきたように、献身性や運動量に関しては決して十分とは言えない。

 しかし、ストライカーとして求められる最重要タスクは得点を奪うことだ。11月2日・第31節ベガルタ仙台戦はMF大森晃太郎が挙げた得点の起点になったものの、チャンスがあった中で決め切れず、試合終了間際の失点で1−1の引き分けに終わった。「僕自身、しっかり決めていれば試合を終わらせられていたと思います。失点したというより、もう1点追加点が取れていればいい形になったはず」と反省を口にしていた。これでリーグ戦は6試合ノーゴール。「2トップが乗ってくるとチームはグッと勢いが出てくると思う。終盤戦でまた加速できるかどうかは彼らの結果が非常に大きいと思っています」(長谷川監督)。

 首位・浦和レッズに勝ち点差を広げられた今、その期待に応えられるのかエースとしての正念場を迎えている。

ナビスコカップ優勝に必要不可欠なゴール

タイトル獲得のためには、エースのゴールが不可欠。宇佐美は歓喜をもたらすことができるか 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 タイトル獲得のために不可欠になってくるのが、エースの得点である。リーグ戦では得点した7試合中6試合で勝利(1試合は引き分け)をもたらした。5得点を挙げる活躍で決勝進出に大きく貢献したナビスコカップでは予選2試合を含む出場6試合中、ゴールした4試合は無敗(3勝1分け)だ。

 このことからも分かるように、宇佐美が決めれば勝率はグッと高くなる。本人は、「僕が点を取れなくてもチームが勝てればいいという気持ちでいます」とチームとしての勝利を最優先するが、「自分で言うのもあれなんですけど、ゴールが戻ってくれば鬼に金棒と言うか、自分にかかっていると思う」とゴールの重要性は十分に理解している。

 8日(土)に迎えるナビスコカップ決勝戦。「ガンバにとってビッグタイトルの一つでもあるので、ぜひ取りたい」と意気込んだ背番号39は、歓喜をもたらすゴールを静かに見据えている。

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著者プロフィール

1981年、福岡県生まれ。大阪の編集プロダクションで情報誌「関西ウォーカー」のスポーツページ制作を担当し、ライターとしてのキャリアをスタートさせる。その後、「ぴあ関西版」編集部でのスポーツ担当を経て、2010年よりフリーライターに。サッカーを中心にスポーツ全般を手掛けるほか、他ジャンルも取材するなど多岐にわたって活動する。大阪府サッカー協会が発刊する大阪サッカー通信『ACTION!』やガンバ大阪刊行物、WEB媒体や雑誌などで執筆中

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