悔しいが「阪神らしい」と許すファン心理 悲願の日本一へ、来季に思いを馳せる

菅野徹

どうせ振るならヒットか犠牲フライを打てよ!

日本シリーズを1勝4敗で敗退した阪神。CS6連勝で臨んだものの、最後は「日本シリーズのビジターで9連敗」という記録だけが残った 【写真は共同】

 予想外の結末だった。確かに後味は悪い。でも西岡剛は逆転するつもりで思い切り振ったということ。振ったけれど、注文通りのホームゲッツーになってしまった。勝負に負けたということ。そこでとっさに最後の大勝負、ギリギリのバクチに賭けたが、それにも負けたということ。

 人を欺くようなプレーをするな、そう言う人もいるだろうが、必死でやっていれば、いろいろなことが起きる。例えば地上すれすれのライナー、ワンバウンドで捕球したとしても、グラブを大げさに持ち上げて、ダイレクトで捕ったとアピールする。ウソと言えばウソだが、必死にプレーしていれば、とっさにそうするだろう。勝ちたいから。もし審判に見抜かれれば、バレたか……と舌を出すし、欺くことができれば逆に笑いをかみ殺して神妙な表情をする。よくあることだ。

 今回の西岡のプレーも放っておけば試合終了になるところを、ギリギリまで悪あがきした。バレるかバレないか。負けるか粘るか。負けたくなかったからやったこと。「騙すようなプレー」ではあったが、責められるプレーだとは思わない。責めるなら、「どうせ振るならヒットか犠牲フライを打てよ!」ということだ。

上がったり下がったりで忙しく…

 ともかく1勝4敗。日本シリーズ敗退で阪神タイガースの2014年が終わった。それにしてもなんと上がったり下がったり忙しい9月、10月だったことか。

 優勝争い佳境の9月上旬によもやの6連敗。うち3つは首位・巨人で、「ああ、また今年も失速」と、3位に沈むチームにガックリきた。その後、じりじりと調子を上げて、10月1日のシーズン最終戦で競り勝つと(広島に4対2で勝利)、広島の失速もあって「限りなく3位に近い2位」で甲子園でのクライマックスシリーズ(CS)開催をゲット。

 前年の悪夢にビビっていると2試合21イニング無失点という(こっちも1点しか取れなかったが)、極端な防御力で勝ち抜け。勢いに乗って東京ドームに乗り込むと、満身創痍(そうい)の巨人を一気のぶちかましで4連勝。なんと10月無敵の6連勝で日本シリーズ出場を決めてしまう。

 そして日本シリーズ初戦も勢いのまま勝って「7連勝!」と盛り上がったが、「そのまま連勝を伸ばしてスイープ、10連勝で日本一!」……などということにはならず、そこから4連敗であっさり終戦。最後に残ったのは、「日本シリーズのビジターで9連敗」という珍記録だった。

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著者プロフィール

フリーライター。野球、鉄道、広告コピーなどを中心に雑誌等で執筆中。旧筆名は「鳴尾浜トラオ」。阪神タイガース評論家を自称する。ブログ「自称阪神タイガース評論家」は2003年12月からほぼ毎朝更新中(ただし10〜12年は、阪神タイガース公式携帯サイトにて「トラオの視点」として連載)。著書に『虎暮らし』(2008年/扶桑社)がある。

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