大病乗り越えたジャッカル最速の菊花賞V ワンアンドオンリー敗因は展開と枠順か

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「僕自身、馬の底知れぬ能力にワクワクしてる」

次走はどこか? いずれにせよこれからの活躍がますます楽しみな大器である 【スポーツナビ】

 その中にあって、手綱を取った騎手の胸にはある“確信”が宿っていたという。
「やっぱり走る馬だなと思いましたね。着順は目立ったものではなかったんですが、感じるものは大きかった」
 うまく言葉で説明するのはなかなか難しそうだったが、ジョッキーだからこそ感じ取れる“走る馬”の感触・感覚であることを語った酒井。レース後すぐに、調教師に「もう1回乗せてほしい」と頼み込むくらい、トーホウジャッカルの潜在能力にほれ込んでしまった。
「(3戦目の)未勝利、500万下と連勝したとき、先々は重賞でも勝負できる馬だと思いました。菊花賞を勝てるかもと意識したのは神戸新聞杯の後ですね」

 ただ、酒井のこれだけ大きな期待感があったとは言っても、デビューから149日での菊花賞制覇は、やはり破格である。なにせこれは、2歳戦がスタートして以降で最速のV。2歳戦がスタートしたのは1946年からであるから、翌1947年以降、68年間でデビュー最速の菊花賞Vなのだ。
「この短い期間でここまで成長して、菊花賞を勝つくらいの器の馬。今後もっともっと楽しみが出てきますね。正直、まだ底が見えたわけではないので、どこまで成長するのかなと期待しています。僕自身、馬の底知れぬ能力にワクワクしていますよ」

 谷調教師も想いは同じだ。
「去年の夏を考えると、素晴らしい生命力、芯の強さがあると思います。末恐ろしいなと思いますし、ものすごい力を感じますよね」

 デビューからここまで休みなく走ってきたため、今後のことは少し楽をさせたあとに考えたいと、次走に関しては現時点では未定。ジャパンカップ、有馬記念に駒を進めるのか、来年に備えて休養に入るかは、これからの発表を待ちたい。しかしながら、決定的に言えることが1つある。それは、今後の王道路線にとんでもない可能性を秘めたスターホース候補が誕生したということだ。

ダービー馬まさかの9着、今後は白紙に

ワンアンドオンリーはまさかの大敗、今後に関しては「白紙」となってしまった 【スポーツナビ】

 その一方で、一敗地にまみれたダービー馬である。
「やはり、3000mという距離でコーナーを6つ回るわけだから、みんな最短距離を狙う。ウチの馬はインに入ろうにも入れなかった。前に壁を作ることもできなかったし、コース取りの差だろうね」
 橋口調教師は淡々と振り返っていた。枠順が発表された木曜日の時点で、7枠15番発走をあまり喜んではいなかったトレーナーだが、的中してほしくない不安が現実のものとなってしまった。

 外枠発走から終始、外を回らされる厳しい展開。「余計に距離を回っているから最後の伸びもなかった」と、自慢の末脚も不発に終わった。「ダービーのときはうまくいったんだけど、しょうがない。これも運」と主戦の横山典。この敗戦をしっかり受け止めつつ、「トーホウジャッカルは強いよ」と、勝者を称えた。

 スタートから前半、やや行きたがった素振りにも見えたが、横山典は「ダービーとさほど変わらない」というだけに、やはり敗因は展開と枠順のアヤということになるか。ここを勝てば、橋口調教師が夢と語るキングジョージへの挑戦にまた一歩近づいたのだが、この結果を受けて「今後はまったくの白紙」とトレーナー。しかしながら、ダービー、神戸新聞杯と不屈の闘志で勝利をもぎ取ってきたワンアンドオンリーだけに、この敗戦で終わってしまう馬ではない。反撃のときは必ず、そして、すぐにでもやって来るはずだ。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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