車いすテニスの国枝、リオ内定第1号に アジアパラ優勝で“最高峰”へスタート

荒木美晴/MA SPORTS

今一度自分のテニスと向き合う

最近は「テニスが硬いという感じ」と話す国枝。107連勝で止まった時と同様、自分のテニスと向き合う 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

 ただ、先に触れたように、ここ2カ月は自分のプレー内容に満足していない。「テニスが硬いという感じかな」と首をかしげる。4年前、107連勝という大きな金字塔を打ち立てた。そんななか、連勝記録にはこだわっているつもりはなかったものの、無意識に自分のやりたいプレーや納得いくプレーより、安全パイの配球をして「負けないプレー」を選択していた、ということがあった。その時の「良くないスパイラル」と似た感覚だという。

 自分のテニスを改善することに挑戦していても、試合のなかでは挑戦者ではない。108戦目で敗れ、「守りに入っていては成長できない」ということに気が付いてからは、翌日から背負っていた何かがすとんと落ちたように、会心のプレーができるようになった。来月、世界トップクラスの選手のみが参加する世界マスターズの出場を控えている。そこで、今一度自分のテニスと正面から向き合うつもりだ。

リオ、そして東京での金メダルを!

リオでの引退を考えていた国枝。しかし2020年東京が決まり、その視線の先には、地元での優勝も視野に入っている 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

 車いすテニスプレーヤーにとって最高峰の大会は、4年に1度のパラリンピックだ。国枝にとってもその舞台は特別で、年間グランドスラム達成もパラリンピックの金メダルのための序章でしかない。そのリオデジャネイロパラリンピックまであと2年。「すぐそこに迫ってきたし、2年でテニスを上げていきたい」と国枝。ロンドンパラリンピック後は、「リオで辞めようと思っていた」。だが、2020年東京パラリンピックの開催が決定し、「自分の人生において東京で行われるパラリンピックはこれが最後だろう。その時に現役でやれるチャンスがあるなら目指したい」と、競技の続行を決めた。

 リオで史上初の3連覇、そして東京で満員となった有明テニスの森で4連覇することが目標だ。

 今回のアジアパラ競技大会では、男女シングルス優勝者にリオパラリンピックの出場権が与えられた。上地結衣(エイベックスグループホールディングス)らが出場した女子は残念ながら上地の3位が最高で、今回金メダリストの国枝が、日本選手団のなかで“リオ内定第1号”となった。

 アジアパラを制し、リオへのスタートラインに立った国枝。今後のさらなる活躍に注目したい。

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著者プロフィール

1998年の長野パラリンピック観戦を機に、パラスポーツの取材を開始。より多くの人に魅力を伝えるべく、国内外の大会に足を運び、スポーツ雑誌やWebサイトに寄稿している。パラリンピックはシドニー大会から東京大会まで、夏季・冬季をあわせて11大会を取材。パラスポーツの報道を専門に行う一般社団法人MA SPORTSの代表を務める。

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