アジア大会で見えた野球普及への課題
野球途上国と日本が発展するための提案

日本がアジア野球発展のためにできること

途上国に野球用具などを寄付する取り組みはDeNAをはじめ、一部の球団が行っている。筆者はこの取り組みを12球団が一丸となってすべきと提案する
途上国に野球用具などを寄付する取り組みはDeNAをはじめ、一部の球団が行っている。筆者はこの取り組みを12球団が一丸となってすべきと提案する【写真は共同】

 それでは日本がアジア野球発展のためにできる、具体的なことは何か。タイの徳永監督は「あくまで個人的な考え」と前置きして、「NPBや社会人のチームが、タイの選手と審判を各球団1人ずつ招いて、半年間鍛え、タイに戻してくれたらと思います。難しいとは思いますが、それができるのは日本だけです。そうやっていけばレベルが上がりますし、オリンピックの野球復活にも近づくと思います」と話した。


 日本のプロ球団ができることについて、09年まで横浜(現横浜DeNA)で専務取締役も務めていた山中氏は「“日本ではたくさんの人が野球場に集まっている”ということをアジアの人たちに実際に見せるのは球団ができることだと思います。“やって楽しい”と思うには、“見て楽しい”と思ってもらうことが第一歩です」とした。そして山中氏は私案として「各球団がそれぞれアジアの1つの国(または地域)を担当するのはどうか」と話した。

12球団が各国に人、物の両面から支援を

 今回のアジア大会を通して、日本がアジアのためにすべきことは大いにあると感じた。しかしそのためには、行う日本側にもメリットが必要だ。そこで今回、せん越ながら日本にとってもプラスになる、アジア球界発展策を考えてみた。


 まずプロ各球団にアジアの野球途上国・地域を割り当て、「サポートチーム制度」を導入する。A球団がタイ、B球団がスリランカ、C球団がモンゴルといった形だ。担当国の決め方だが、日本の球団は大手企業が所有しているという点を生かして、社業と関わりのある国を担当できるようにし、ビジネスや交流に結び付くようにする。


 この案では各球団のファンの力が必要になる。具体的には用具と人的支援をファンに仰ぐというものだ。各スタジアムなどに使わなくなった野球用品を寄付するコーナーを設置し、ファンによって集められた品々をサポートチームに贈呈する。その数は球団ホームページなどで随時公開し、各球団のファンが競うようにすれば、単なる寄付よりも積極的な関与が期待できる。


 また日本に求められる現地での指導だが、これまでにもプロ経験者が各国に渡ったことはあるが、指導者だけでは練習は難しい。そこでそれを補助する人材をファンから募集し、サポートチームの一員として活動してもらう。これまでにも日本から、のべ235人の青年海外協力隊員が野球の普及活動を行っているが(2014年時点。JICA調べ)、その窓口を各球団にすれば、これまでよりも関心は高まるだろう。オフには担当国を訪れる観光ツアーを実施すれば、お互いがより近い存在になる。現地では自分のグラブを手にした、子供の姿を目にするかもしれない。

日本市場の将来性に疑問あり、アジア進出はすべき点

 一方、球団側のメリットとしては、新たな集客策として担当国からの観光客の誘致がある。野球というコンテンツを、ターゲットを絞ってアピールできるチャンスだ。昨年、日本を訪れる外国人が、初めて年間1000万人を超えた。スポーツツーリズム(スポーツ観光)を推進し、観光立国を実現しようとしている現在の日本において、プロ野球観戦を観光資源として生かすためにも、アジアへの野球の普及は必要だ。また、担当国の選手が成長し、日本でプレーするようなことがあれば、映像コンテンツの提供をはじめ、経済的な効果はより大きくなるだろう。


 以上の提案の実現有無について、日本の球団の事業部門担当者に伝えたところ、以下のような回答があった。


「面白いと思う球団と、面倒くさいと思う球団の2つに分かれると思います。親会社次第で考える球団もあるでしょう。担当国を決めるのが良いのかは分かりませんが、国内マーケットの将来性にクエスチョンを持っている球団にとって、アジアは収益規模としては大きくなくても、今後、進めるべき点です」


 次回、18年のジャカルタ(インドネシア)・アジア大会では野球が実施競技から除外される可能性もある。その前に日本球界は何をすべきか考える必要があるのではないか。

室井昌也
室井昌也

1972年、東京生まれ。韓国プロ野球の伝え手として、2004年から著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』を毎年発行。韓国では2006年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当し、その他、取材成果や韓国球界とのつながりはメディアや日本の球団などでも反映されている。ストライク・ゾーン取締役社長。

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