アジア大会で見えた野球普及への課題、野球途上国と日本が発展するための提案
毎回、日本、韓国、台湾のメダル争い
フライを落としてしまったモンゴルの選手。プレーの技術はもちろん、ルールの理解なども普及に向けた課題となっている 【写真:ロイター/アフロ】
今回の出場チームは上記3チームのほか、中国、パキスタン、モンゴル、タイ、香港の計8チーム。アジアにはこの他にもフィリピン、スリランカなどで野球が行われているが、大会関係者によると、「それらの国では、野球はメダル獲得が望めない競技なので、国が支援を行わず、参加を見送ったケースもある」という。このような状況で今後、アジア大会で野球をやる意味はあるのか。そしてアジアの中で日本がすべき役割は何か。
国内試合すらできないアジアの野球途上国
タイ代表を率いる徳永政夫監督(58=北九州市立大学野球部監督)は、「選手は高校生と大学生、教員や軍人などの社会人なので、練習は大会2カ月前の土日のみです。試合は8月の日曜日に、タイ駐在の韓国企業の人たちが練習試合をしてくれました。試合の中でしか経験できないことは多いですが、国内では対外試合ができないのでどうしてもぶっつけ本番になってしまいます」と実情を話す。
野球が広まらない大きな2つの理由
「野球はバレーボールやバスケットと違って、寒冷地ではできない。そしてお金がかかります」
アジアに限ると、モンゴルや中国北部を除き、気候的には、野球ができる環境にはある。ただ経済的な負担は大きな問題だ。今回の試合でも、例えばパキスタンは打者ごとにヘルメットの色が違っていた。パキスタンのチーム関係者は「強いチームのように用具が十分にない」と話す。
野球用具の不足に関しては、全3試合で無得点コールド負けに終わったモンゴル代表に対し、各メディアから繰り返し質問が及んだ。それに対し、モンゴルのチュルテム・ムンクサイハンコーチ(33)は「バックアップを受けているので大丈夫です」と答えた。実際、日本や韓国などは各チームに物品支援を行っている。しかしそれを特定の組織・団体だけが行うのは厳しく、大規模かつ持続性のある支援を行わなければ、野球人口は増えないだろう。
そして野球が世界的に広がらない理由にルールの難しさもある。23日の予選リーグ・日本対パキスタンでは3回表、日本の攻撃時、走塁ミスで三塁ベースに2人の走者がついてしまう場面があった。ルール上、前の走者に三塁ベースの占有権があるため、後ろの走者がアウトになるのだが、パキスタンの野手が後ろから来た走者にタッチするまで、インプレーのまま、しばらくの間が生じた。前出の山中氏はこの点を例にし、「まずルールを教えるというところから始めないといけない」と発展への手順を挙げた。