森友哉に感じる見守る楽しさ…その憎めない性格と才能、そして課題

市川忍

先輩から信頼を得る憎めないキャラクター

森(左)とバッテリーを組み2カ月ぶりの勝利を挙げた菊池は「先輩からかわいがられるタイプ」と森を評する 【写真は共同】

 高校時代から超高校級の逸材と言われてきた森だが、簡単に活躍できるほどプロの世界は甘くない。では、森が1軍に居続けられる理由はなんだろうか。

「年上の投手に対しても遠慮なんて全く感じない」と袴田コーチは目を丸くする。前出の菊池も、こう森を評する。
「マスクをかぶると強気だけど、普段はすごく謙虚だし、関西人のノリでおもしろいことも言う。先輩からかわいがられるタイプの性格ですよ」

 菊池と森がバッテリーを組み、ともにお立ち台に上がった8月29日も、「菊池投手の良いボールを生かしたかったのか?」という質問に「ストレート以外の球も素晴らしいですけど、特にストレートが良かったので」と先輩を立てる気配りを見せた。試合ではふてぶてしいほど大胆でありながら、いざグラウンドを離れると、こうして配慮できる細やかな一面も見せる。森の憎めないキャラクターも、徐々に先輩投手陣から信頼を得てきている要因だろう。

山積の課題もどう乗り越えるか見守る楽しさあり

 森は振り返る。
「打者の苦手なところを攻めるより、投手が持つ良い球で勝負したいと思っています。スタメンで試合に出させてもらって9イニング、リードした中で、1巡目と2巡目でのリードの変え方とか、コースをマークさせようかとか、いろいろ考えて試合を進められた部分は良かったと思います。ただ、これまでは短いイニングで抑える方法を考えてきましたけど、9回となると、どうしてもまだ隙があるなぁと反省していますね」

 ランナーをためたときの配球を含めたインサイドワークはもちろん、高校時代とは違う長いシーズンをどう乗り切るか。そして森を研究し、対策を練ってくる相手バッテリーや、相手打者にどう対応するか。他にもワンバウンドの補球や、本塁刺殺を狙ったときのブロッキングなど課題は数多く残されているが、何と言っても、まだ1年目の19歳。将来有望なルーキーが、どのようにして壁を乗り越え、成長していくのか、その経緯を見守るのも野球観戦の楽しみのひとつではないか。

 菊池とバッテリーを組み、勝利を手にした後、森はきっぱりと言った。

「まずは勝てたことが大きい。ここからがスタートです」

 大人びたルーキーは、自身の活躍や周囲の期待に浮き足立つことなく、自分の現在地をきちんと把握している。

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著者プロフィール

フリーランスライター/「Number」(文藝春秋)、「Sportiva」(集英社)などで執筆。プロ野球、男子バレーボールを中心に活動中。

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