今夏の補強は「パニック・バイ」なのか 過渡期を迎えたマンチェスター・Uの今後
「ウェルベックの放出を後悔するだろう」
ファルカオ獲得で退団を余儀なくされたのがウェルベック(白)だ。アカデミーが輩出したこの逸材の放出を嘆く声は多い 【Getty Images】
8月下旬から、ファン・ハールは補強と同時に余剰戦力の整理を行った。ドルトムントに復帰した香川真司もそのひとり。他にも、ナニ(スポルティング)、ウィルフリード・ザハ(クリスタル・パレス)、トム・クレバリー(アストン・ビラ)、ハビエル・エルナンデス(レアル・マドリー)などがローンで放出された。“もらい手”がいれば、マルワン・フェライニやアンデルソンもこの中に入っていたはずだ。
そして、移籍期限ギリギリで、ファルカオ加入とほぼ同時に決まったのが、クラブ生え抜きのFWダニー・ウェルベックのアーセナル移籍である。ローンではなく1600万ポンド(約28億円)での完全移籍を選んだ彼の退団が、もうひとつの議論の種だ。
『テレグラフ』のエース記者、ヘンリー・ウィンターの見解はこう。
「ファルカオは生粋のフィニッシャー。素晴らしい点取り屋だが、彼らはウェルベックの放出を後悔するだろう。彼はアカデミーの象徴だった。彼はマンチェスター・Uが常にいい若手を輩出するというシンボルだった」
『マンチェスター・イブニング・ニュース』によると、先週末のバーンリー戦まで、ベンチを含むユナイテッドのマッチデー・メンバーには、実に3704試合連続でアカデミー出身選手が含まれているそうだ。1937年から続いているという、クラブの哲学を明確に示すこの記録が、近い将来についえてしまうのではないか。ウェルベック売却に寄せて、同紙はそう警鐘を鳴らしている。
クラブはどこへ向かって進んでいくのか
こんな見出しを打った『デイリーメール』の記事でも、「我々は若いプレーヤーに投資する。マンチェスター・Cのように、すでに完成された選手に馬鹿げた金額を使って愚かな給与額を支払うことはしない」というアレックス・ファーガソンのセリフを引用し、クラブがその哲学を捨ててしまったことが糾弾されている。
もちろん、ディ・マリアやファルカオといったスターの加入を歓迎する声もある。クラブOBのフィル・ネビルは、「ルイス・スアレスやギャレス・ベイルが出て行ってしまい、人々はスペインやドイツの方がプレミアリーグより上だと思っている。だが、イングランドにはまだベストプレーヤーがやってくるのだと証明された。それは素晴らしいと思う」と意見を述べた。
このように、過渡期を迎えているマンチェスター・Uの今夏の補強は、さまざまな側面から議論を巻き起こしている。守備は大丈夫なのか? 次の試合のシステムは? トップ4に入れるのか? 1月には誰がやってくるのか?
議論は尽きない。今夏の補強が「パニック・バイ」だったのかどうか、そして、この先クラブはどこへ向かって進んでいくのか、その答えを知るためにも、復権を目指す名門クラブからはまだまだ目が離せない。