W杯で再確認した目指すべきGK像=西川周作×権田修一クロスインタビュー

構成:戸塚啓

権田「レッズ戦は攻守に忍耐強さが必要」

「攻守に忍耐強さが必要」と浦和戦のポイントを挙げた権田 【源賀津己】

──8月23日のJ1リーグ戦第21節で、FC東京と浦和レッズの直接対決が行われます。相手チームの印象は?

西川 要注意のチームです。前回の対戦(5月3日の11節)は1−0で勝ちましたけど、メンバーも変わっていますし、いまのFC東京は戦い方がはっきりしているように感じる。失点が少なくて結果が出ていますし。

権田 レッズはやることがはっきりしている。それによって、選手の力が引き出されているのでは。(ミハイロ・)ペトロヴィッチ監督になって3年目ですよね? 今年の最初の対戦でも、「去年よりさらに良くなっているな」と感じました。

──勝負の分かれ目は?

西川 相手よりハードワークすることです。それは、すべての試合に言えることですが。

権田 リーグ戦再開後は失点が減ってきていると言われますが、フィールドプレーヤーがハードワークしてくれているおかげです。チーム全体でしっかりと守備をしている。

西川 もうひとつは、無駄な失点をしないことですね。

権田 レッズが強いのは間違いないので、ゲームを支配されることを想定しなければいけない。僕らが支配しても、なかなかゴールを割れないことも想定しなければいけない。そう考えると、攻撃でも守備でも忍耐強さが必要だと思います。

西川 僕自身はガンガン攻められたほうがいいですね。相手の攻撃をかいくぐれば、チャンスになりますし。かいくぐれなければ失点の可能性が増しますが、それは全く考えていません。相手に合わせるのではなく、自分たちのスタイルを貫けるか。最近はレッズに対して引いて守るチームが多いですけど、それでも崩し切る力はありますから。

──19節終了時の失点はレッズがサガン鳥栖と並んでリーグ最少で、次に少ないのがFC東京です(編注:20節終了時点で浦和が14失点で最少、FC東京が15失点で2位)。

権田 僕らのサッカーを守備的と見る方がいるかもしれないですけれど、自分たちは守備的ではないという自負を持っています。レッズも失点は少ないけれど、守備的と考えることはないと思うのです。どちらも守備がしっかりしているので我慢比べのイメージがあるけれど、チャンスのないゲームにはならないでしょう。お互いに何回か決定機を迎えるなかで、僕と周作くんがどんな仕事をするか。W杯準決勝のオランダ対アルゼンチンのように、チャンスとピンチがありつつも、終わってみたら「いい試合だったね」となるのでは。

西川 8月、9月は対戦相手もレッズを研究してくると思うので、いかに上位をキープできるか、いかに負けない戦いをしていくかが大事になってくる。2014年のシーズンが終わったときに、「西川が来て良かった」と思われる結果を残さないと、僕がレッズへ移籍した意味はない。それぐらいの気持ちでやっています。

西川「優勝するためにはラッキーボーイが大事」

西川はリーグ戦優勝の条件として、ラッキーボーイの存在を挙げた 【星野洋介】

──チームの現在地については?

権田 再開後は「調子がいいね」と言われることが多いですが、絶対にパーフェクトではない。次の対戦相手はウチの試合を見て、「ここのスペースが空いている」といった分析をしてくるはずです。そこで僕らは先読みではないですけれど、「この前の試合はこういうピンチがあって、次の相手が狙ってきそうだからどう対応しようか」といったように、みんなで考えている。それだけに、代表まで頭がまわらないと言うか……しかもFC東京は、練習が1日多いのです。この夏場でも試合翌日にリカバリートレーニングがないので、日々のトレーニングをしっかりやりながら、空いた時間にみんなで考える作業をする。そうすると、もう1週間が終わっちゃったという繰り返しですね。

西川 リーグ戦は34試合ありますから、勝てない時期もある。そこでの姿勢は本当に重要で、ひとつ勝てばまた雰囲気は良くなる。どんなときでもチームがまとまることが大事でしょう。ここまであまりゲームに絡んでいない選手が、この先の試合でラッキーボーイになってくれるのではないかと期待しています。メンバー外の選手も何とかメンバーに入ろうという気持ちを持って、ミニゲームで僕から点を取ってやろうという姿勢を感じます。居残りで練習する選手もいますし。試合に出ている選手だけでは、優勝には絶対に手が届きません。ラッキーボーイの存在は大事です。そういう活躍のできる可能性のある選手が多いので、期待しています。

権田 今シーズンから(マッシモ・)フィッカデンティ監督になって、守備は作るものだと改めて感じています。監督が就任した当初に「そこにこだわるんだ」と感じたところが、いま実際のゲームで生かされているのです。守備の部分で頭と身体がオートマティックにリンクするようになってきたので、思考がボールを奪ったあとへ向くようになっていますね。

西川 最少失点を実現できれば優勝できる、と信じています。リーグ優勝した過去2シーズンのサンフレッチェでは、そういう意識でやってきました。広島では前半戦は完封試合が多かったけれど、後半戦はなかなか完封できなくて。去年がそうでした。その経験を踏まえて、後半戦もたくさん完封したい。大分トリニータのときに作った17完封の記録を超えたいというのが、いまのモチベーションになっています。

権田 シーズン開幕からさまざまな戦術を監督から与えられてきたことで、相手によって守り方をうまく変えながら戦うことができている。チームとして吸収してきた監督の考えるサッカーを、いろいろな形で表現していく段階に入っていると言うか……。守備がスムーズにいくぶん、攻撃にも出ていけているのかな、と思いますね。得点も獲れるようになっていますし。個人的にもW杯を見て「こういうのは大事だな」と感じたことと、いまチームで自分に求められていることが一致している部分があるので、そこは練習から意識して取り組んでいます。

西川から権田へ、権田から西川への3つの質問

西川からの3つの質問に権田の答えは? 【源賀津己】

──今回のクロスインタビューでは、事前にお互いへの質問を3つうかがっています。まずは西川選手から権田選手への質問です。家族で遊びに行くのに、おススメのスポットはありますか?

権田 キドキドってご存じですか?

──ショッピングモールなどにある、子ども向けの屋内の遊び場ですね。

権田 安全に遊びながら、子どもに必要な動きを引き出せる場所、という感じで。ウチの子どもにはまだ少し早いのですが、西川選手のお子さんには、ちょうどいいのではないですか。

──いまハマっていることは何ですか?

権田 それもやっぱり子ども絡みで、育児ですね。練習が午後からなら午前中に公園へ行って、夜はお風呂に入れるのが楽しいです。ブラジルW杯のときみたいに、長く留守にすることがあるじゃないですか。だから、子どもと一緒にいられるときは楽しいですね。

──苦手なタイプはいますか?

権田 サッカー選手で言えば、明らかに点を獲りたそうな選手は好きじゃないですね。どっから見ても「オレは点獲りたい」というのが分かる人っているのですけれど、そういうタイプは苦手ですね。

いつも笑顔を絶やさない西川に、権田は「いままで一番怒ったことは何か?」と質問 【星野洋介】

──それでは、権田選手から西川選手への質問です。2度移籍を経験していますが、大変なことはありますか?

西川 引っ越しの荷造りですね。大分から広島、広島から浦和と、家族も一緒に来てくれているからすごく助かっています。住むところは僕がしっかり探して、あとは奥さんがいろいろとやってくれています。

──西川選手はいつも笑顔を絶やさないですが、いままでで一番怒ったことは何ですか?

西川 怒ったこと、何だろう……あっ、中学生のときに、友だちに筆箱を壊されたことがありました。僕にだけちょっかいを出す友だちがいて、当時から僕はニコニコしながら「やめろよ」とか言ったのですが、お気に入りの筆箱を壊されて。さすがに腹が立って、放課後に怒りました(笑)。

──サッカー選手になっていなかったら、どんな仕事をしていましたか?

西川 サラリーマンでしょうか。何をするにしても、大分から、生まれ育った宇佐市から出ていないと思う。そこでサラリーマンになっているか、農業をやっているか。とにかく、地元で働いていたと思います。

──8月23日のFC東京vs.浦和レッズが、好ゲームになることを期待しています。今日はどうもありがとうございました。

取材:戸塚啓(権田修一)、碧山緒里摩(西川周作)

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著者プロフィール

1968年、神奈川県出身。法政大学第二高等学校、法政大学を経て、1991年より『週刊サッカーダイジェスト』編集者に。1998年フリーランスとなる。ワールドカップは1998年より5大会連続で取材中。『Number』(文芸春秋)、『Jリーグサッカーキング』(フロムワン)などとともに、大宮アルディージャのオフィシャルライター、J SPORTS『ドイツブンデスリーガ』『オランダエールディビジ』などの解説としても活躍。主な著書に『不動の絆』(角川書店)、『マリーシア〜駆け引きが日本サッカーを強くする』(光文社新書)、『僕らは強くなりたい〜東北高校野球部、震災の中のセンバツ』(幻冬舎)がある。

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