高い潜在能力を感じさせた手倉森ジャパン リオ、そしてロシアを目指す若き選手たち

中倉一志

手応え十分の3日間

アビスパ福岡との練習試合でゴールを決めて喜ぶ岩波。見据えるのはアジア大会の連覇とリオ五輪のメダル獲得だ 【写真は共同】

 そして最終日はアビスパ福岡との練習試合が行われた。この試合のテーマは、勝負に対する割り切りと柔軟性。印象的だったのは、4−3−3のシステムのほか、ぶっつけ本番で3バックを試したことに加え、中盤の構成を頻繁に変え、それに伴って選手のポジションも盛んに移動させたことだ。ざっと5種類ほどのシステムを試した。目的はチームとしての柔軟性を高めること。90分の中で、これだけ変えれば多少は慌ただしくなるのはやむを得ないが、その中でも無難にゲームを進めるところに、このチームの潜在能力の高さが感じられた。

 割り切りという面ではディフェンディングサードでの守り方に顕著に表れた。まだ守備組織を構築し始めた段階では、くさびのボールを簡単にバイタルエリアに入れられるという課題は残ったものの、そこから先は泥くさく守って得点を許さなかった。また、2点をリードして迎えた後半では、リスクを最小限に抑えて2−0のまま試合を終わらせることを選択。試合としてのスペクタル性には欠いても、勝つということにこだわったプレーに徹した。

 そして、チームが持つポテンシャルの高さが最も発揮されたのは攻撃の部分。ボールを奪って前を向くと、1トップの鈴木武蔵(アルビレックス新潟)のポストプレーを起点に、スムーズにボールをゴール前まで運んだ。「守ってからのカウンターというところがうまくはまりそうだなという印象と、セットプレーから点が取れたのは、したたかさを植えつけられるだろうなと感じさせてくれた」と手倉森監督も手応えを口にした。

 もちろん、3日間のトレーニングキャンプではやれることは限られている。しかし、総じて見れば順調に過ごした3日間だった。

「ブラジルW杯が終わった時から、次のW杯を目指しているし、その過程にあるアジア大会やリオデジャネイロ五輪で、良い結果を残さないといけないと思っている。まずはアジア大会の連覇と、五輪でのメダル獲得は絶対に果たさないといけないと思っている。チームとしても、個人としても課題はあるが、そこに向かってやっていかないといけないと思う」(岩波拓也/ヴィッセル神戸)

 アジア大会、リオ、そしてロシアに向かって走り出したU−21日本代表。これからどう成長していくのか楽しみなチームである。

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著者プロフィール

1957年生まれ。サッカーとの出会いは小学校6年生の時。偶然つけたTVで伝説の「三菱ダイヤモンドサッカー」を目にしたのがきっかけ。長髪をなびかせて左サイドを疾走するジョージ・ベストの姿を見た瞬間にサッカーの虜となる。大学卒業後は生命保険会社に勤務し典型的なワーカホリックとなったが、Jリーグの開幕が再び消し切れぬサッカーへの思いに火をつけ、1998年からスタジアムでの取材を開始した。現在は福岡に在住。アビスパ福岡を中心に、幼稚園、女子サッカー、天皇杯まで、ありとあらゆるカテゴリーのサッカーを見ることを信条にしている

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