IBF王者・高山、4団体制覇に挑む=8月のボクシング興行見どころ

船橋真二郎

駆け引きの小原vs.ハートの強さの岩渕

王者・小原佳太(写真は日本王者時代)と挑戦者・岩渕による8.11東洋太平洋S・ライト級王座戦はともにKO率の高い強打者同士の一戦となった 【共同】

 国内で最注目のカードは8月11日、東京・後楽園ホールで行なわれる東洋太平洋スーパーライト級タイトルマッチだろう。4月の決定戦でスリリングな4回KO勝ちで王者になった小原佳太(三迫)が、元日本王者でWBO14位のサウスポー岩渕真也(草加有沢)を迎える初防衛戦は、スーパーライト級の国内最強を決める戦いでもある。岩渕は昨年4月の東洋挑戦には失敗したが、2月に世界ランカーのジムレックス・ハカ(フィリピン)をダウン挽回の7回TKOに下し、再浮上した。小原は11勝中10KO(1敗)、岩渕は23勝中19KO(4敗)の強打者同士。プロキャリアは岩渕が上だが、アマキャリアでは国体2冠の小原が上回る。小原は駆け引きの巧みさ、岩渕はハートの強さと強打をKOに結びつけるアプローチが違うだけに、かみ合いの良さも十分。好勝負の予感がぷんぷんする。

 11日はダブルタイトルマッチ。日本スーパーフライ級王者の戸部洋平(三迫)とWBA5位で16戦全勝9KOの石田匠(井岡)の初防衛戦も注目だ。小原と同じく国体2冠からプロデビューした戸部は、ここまで濃密なキャリアを歩んできた。2戦目で元世界王者ワンディ・シンワンチャー(タイ)、3戦目で後の世界王者・河野公平(ワタナベ)に勝利。5戦目で赤穂亮(横浜光)の東洋タイトルに挑戦し、8回TKOに敗れてからはやや低迷したが、今年4月、江藤大喜(白井・具志堅)との決定戦を9回TKOで制し、初戴冠を果たした。対する国体(ジュニア)優勝から17歳でデビューした石田は順調にキャリアを重ね、昨年9月、タイの世界ランカーを2回TKOで下して世界ランク入り。ともに左ジャブを軸に組み立てるが、出入りの戸部、アウトボクシングの石田と得意な距離が異なる。見応えのある技術戦が展開されるだろう。

世界王者・小関桃が世界タイトルV14戦

世界タイ記録となるV14戦に挑むWBC女子アトム級王者・小関桃 【t.SAKUMA】

 ノンタイトルながら2日の後楽園ホールも好カード。元東洋太平洋スーパーフライ級王者で世界挑戦経験のある赤穂と、元日本スーパーバンタム級王者で6度防衛の芹江匡晋(伴流)がバンタム級10回戦で激突する。1階級上げた赤穂は長く減量に苦しんできた分、追い風だが、1階級下げる芹江はその減量がポイントになる。元王者同士のサバイバル戦は、万全のコンディションなら期待どおりの拮抗した戦いになるはずだ。この日のメインでは前日本スーパーフェザー級王者の金子大樹(横浜光)がシリロ・エスピノ(フィリピン)と対戦する。2度のロサンゼルス合宿で様々な国籍の選手とスパーリングしたことがある金子だが、実戦では初の外国人選手。エスピノは昨年2月に来日し、元WBA世界スーパーバンタム級王者の李冽理(横浜光=引退)と引き分けた実績がある。金子にとってはステップアップの一戦。

 同日2日の東京・足立区総合スポーツセンターは女子のダブル世界タイトルマッチ。IBFライトフライ級戦は地元出身の柴田直子(ワールドスポーツ)が1位アナ・アラソラ(メキシコ)を挑戦者に迎え、2度目の防衛戦を行なう。アラソラは主要4団体では、実に4度目の世界挑戦。31戦(20勝13KO9敗2分)とキャリア豊富なサウスポーを相手に柴田は力を示せるか。WBCアトム級戦は小関桃(青木)が2位デニス・キャッスル(イギリス)と14度目の防衛戦。女子の国内最多記録更新とともに世界タイ記録が懸かる。挑戦者は元WBCムエタイ王者だが、ボクシングのキャリアは2戦(2勝2KO)の42歳で実力は未知数。

 その他、8月のタイトルマッチは新旧対決の構図。4日(後楽園ホール)の日本バンタム級戦は31歳で王者になった益田健太郎(新日本木村)が元東洋太平洋スーパーフライ級王者で世界挑戦経験のある冨山浩之介(ワタナベ)と初防衛戦。益田の真価が問われる一戦だ。10日(大阪・住吉区民センター)の日本スーパーウェルター級王座決定戦は元同級東洋太平洋・日本王者の野中悠樹(渥美)と初タイトルマッチの長島謙吾(角海老宝石)の顔合わせ。両者は尼崎ジムに所属したことがあり、元同門対決になる。18日(後楽園ホール)の東洋太平洋スーパーウェルター級王座決定戦は3月に引き分けた元日本ウェルター級王者の沼田康司(真闘)と下川原雄大(角海老宝石)の再戦。沼田は2本目のベルト、下川原は初のベルトを懸けて、決着のリングに上がる。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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