アギーレ就任に尽きない不安要素 ザッケローニの後任として適任なのか?
国際舞台での実績は十分だが……
日本代表監督就任に合意したハビエル・アギーレ氏。メキシコやスペインのクラブチームを率いて豊富な実績と経験を持つ 【写真:ロイター/アフロ】
ブラジル大会ではアルベルト・ザッケローニ前監督が国際舞台での経験不足を露呈しており、日本サッカー協会側がW杯での豊富な実績と経験を有する指揮官を望んでいただけに、その点では申し分のない存在のように思える。スペイン人のGKコーチなど脇を固めるスタッフも決まり、4年後のW杯ロシア大会に向けてアギーレ体制で新たなスタートが切られることとなった。
何度も論じられてきたことだが、メキシコのパスサッカーは日本が模範とすべきスタイルだと言われている。体格的に似通っており、アジリティー(敏しょう性)とテクニックを生かしてパスをつなぐスタイルは、確かに日本が目指すべきものだ。また、スペインの“ティキ・タカ(ショートパスを細かくつなぐスタイル)”も、日本にとって理想的なスタイルの一つだろう。アギーレはこの2つの国で指導者としてのキャリアを積み上げてきただけに、ポゼッションを基盤に置く攻撃的なサッカーに精通しているような印象を受ける。しかし、彼がザッケローニの下で追求してきたスタイルをさらに高められる指揮官かと問われれば疑問符をつけざるを得ず、いくつかの不安要素も見え隠れする。
カウンターに欠かせない、信頼の置けるCF
オサスナやアトレティコ・マドリー、エスパニョールといったクラブに共通するのは、堅守速攻スタイルが伝統だという点。そしてアギーレ自身も、ソリッドな守備をベースにしたカウンタースタイルの構築を得意としている。自陣で守備ブロックを形成して相手の攻撃を跳ね返し、奪ったボールは一気に前線へと展開してFW陣が勝負を挑むスタイルだ。本人が日本代表でも同じやり方を踏襲するのであれば、ザッケローニ時代とは真逆のアプローチでチームを作ることになる。果敢に得点を奪いに行くのではなく、まずは失点しないこと、負けないことを念頭に置いた現実的な戦い方になると考えられる。
ただし、彼のカウンター戦術を機能させるためには、信頼の置けるセンターFW(CF)が必要になる。オサスナ時代はサボ・ミロシェビッチ、アトレティコ・マドリーではディエゴ・フォルランとセルヒオ・アグエロ、エスパニョールではセルヒオ・ガルシアがポイントゲッターの役割を担った。個の力でゴールを奪える屈強なストライカーが不可欠なのだが、今の日本でそのようなタイプのFWを見いだすのは難しい。果たして、アギーレは誰にその役割を担わせるのか。