上原浩治の代替選出は“既定路線” なぜ最初の球宴メンバーから漏れたのか?

菊田康彦

ファレル監督の誤算、選手間投票で選ばれず

ア・リーグの監督を務めるレッドソックスのファレル監督。当初のもくろみは外れたものの結果的に上原を球宴に出場させることはできた 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 メジャーリーグのオールスター出場選手は、「ファン投票」「選手間投票」「監督推薦」「最後の1人を決めるインターネット投票」という4つのプロセスで選ばれる。ただし、日本と違って投手はファン投票の対象外であり、選手間投票で先発部門の上位5人もしくは救援部門の上位3人に入るか、監督推薦を受けるしかない。今年の場合、田中は選手間投票で先発部門の1位となり、ダルビッシュ有(レンジャーズ)も5位に入った。これはあくまでも推測だが、ファレル監督は上原も選手間投票で選ばれると踏んでいたのではないか。ところが──。

「驚いたよ。選手間投票で選ばれる3人の救援投手の中に、彼(上原)は入っていなかったんだ」(ファレル監督)
 もくろみ通りにはいかず、上原は選手間投票選出から漏れてしまった。残る監督推薦の枠は4人。そこに自軍の選手を2人も送り込むのは、誰もが納得するような圧倒的な成績でも残していないと難しい。

 結局、ファレル監督は監督推薦でグレン・パーキンス(ツインズ)、マックス・シャーザー(タイガース)、デービッド・プライス(レイズ)を選出した。パーキンスはリーグ3位タイの22セーブを挙げているが、防御率3.05、セーブ成功率88パーセント、被打率2割3分と、安定感では上原には及ばない。このあたりは、今年のオールスターが開催されるターゲット・フィールドを本拠地とするツインズへの配慮と言えるだろう。

39歳、日本人最年長で球宴出場へ

 ここまで11勝のシャーザーと8勝のプライスは、それぞれ2013年と12年のサイ・ヤング賞投手で、いわばリーグを代表する“顔”である。最後の1枠に自軍のエースを取るか、守護神を取るかの選択を迫られたファレル監督は、今季年俸425万ドル(約4億3000万円)の守護神ではなく、年俸1300万ドル(約13億2000万円)と“格上”のエースを選んだということだ。

 したがって、ファレル監督には「上原に申し訳ない」との思いがあったはずで、それがくだんの「コウジは代替選手の第1候補」という発言につながっている。だから今回の上原の球宴メンバー入りに誰よりも胸をなで下ろしているのは、ファレル監督その人だろう。

 田中が右ヒジの炎症によるDL入りでオールスターを辞退したのは複雑であり、10日になってじん帯の部分断裂と判明したのは衝撃的だった。ただ、上原の出場決定自体は喜ばしい話だ。39歳での出場は、日本人選手としては最年長。果たして登板機会はあるのか? あるとすればどんな場面になるのか? 少々気が早いが、01年の佐々木主浩(マリナーズ)に次いで日本人としては2人目の球宴セーブにも期待したいところだ。

(文中の記録はすべて現地7月10日終了時点のもの)

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著者プロフィール

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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