強化の足かせだった「アジアのカレンダー」=ザックジャパンの4年間 第2回・強化編

飯尾篤史

コパ・アメリカの不参加は誤算だった

W杯の試金石となったコンフェデ杯の出場だったが、ここから課題を克服するにはあまりに時間が短すぎた 【Getty Images】

 アジア予選を終え、コンフェデ杯に出場してからは、強豪と対戦したり、海外で強化試合を組む機会が増えた。しかし、残り1年という時間では、露呈した課題を克服するのにあまりにも短かった。

 残念だったのは、11年7月に招待されていたコパ・アメリカへの出場を東日本大震災の影響で断念せざるを得なかったことだ。数少ない真剣勝負の場を失い、ザッケローニ監督にとっても誤算だったに違いないが、懸念すべきは、この秋に発足する新生・日本代表も、ザックジャパンと同じ問題を抱えることだ。

 次のアジアカップも15年1月に開催されるため、アジアカップとアジア予選に発足からの約3年間を費やすことになり、再び招かれた15年のコパ・アメリカの出場を、今度は選手の拘束力がないことや、Jリーグや五輪予選などの日程の都合を理由に、諦めることになったからだ。

 4年後のロシアW杯に向けた強化に関して理想を言えば、次のアジアカップでも優勝し、3年後のコンフェデ杯の出場権を獲得し、アウェーでの強化マッチもできる限り増やしたいところだ。ザックジャパンは4年間で26試合のテストマッチを行ない、そのうち国内で戦ったのが16試合で、国外は10試合だったが、そのバランスをせめて逆転させたい。

国内での親善試合を有意義な強化の場に

 もっとも、「アジアのカレンダー」が変わらない以上は、日本代表の強化スケジュールをそれ以上、劇的に変えるのも難しいだろう。それならば、アジア予選や国内での親善試合を強化の場として少しでも有意義なものにしていくほかない。

 そこでチャレンジしたいのは、アジアカップのあと、少なくともロシアW杯1次予選(次回の予選から2次、3次予選が廃止になった)が終わるまでは、Jリーグでプレーする中堅選手や若手を積極的に起用し、国際経験を積ませていくという案だ。

 優勝してコンフェデ杯の出場権を得るために、アジアカップにはベストメンバーを送り込みたい。だが、ザッケローニ監督と同じように、その後も本田圭佑や香川真司、長友佑都といった欧州組を起用し続ければ、世代交代は一向に進まない。チーム内に競争意識も芽生えにくいから、チーム力のアップにもつながらない。

 また、国内の親善試合が強化にならないのは、相手チームの本気度が低いうえ、10時間以上かけて帰国した欧州組も疲労の色が濃く、スパーリングのようなゲームになってしまうからだ。しかも、彼らはシーズン中にこれを何度も繰り返すからコンディションを崩しやすく、クラブでのポジションを失う危険性もある。

 だから、しばらくの間、海外の強化試合以外で欧州組を招集するのは控え、1次予選や国内の親善試合は国内組だけで戦い、彼らに国際試合を経験させる。そうして最終予選が始まる段になって国内組と欧州組の融合を図り、本格的なチーム作りを進めていく。

欧州組を優遇せず、当たり前の競争原理を働かす

 その際、招集する欧州組は所属クラブで試合に出ていることが条件だ。代表でのポジションを約束することはない。アンタッチャブルな存在は作らず、熾烈(しれつ)なポジション争いを制した選手だけが試合に出られるという、当たり前の競争原理が働くようにする。

 強豪国とのアウェーゲームをこれまで以上に増やすだけでなく、国内での親善試合や1次予選を有効に使うことでチームの強化を図る――。アジアのカレンダーが特殊である以上、その両輪でのアプローチが重要なのではないか。

 もっとも、負ければクビが飛びかねない新監督が1次予選とはいえ国内組だけで戦うことに消極的になる可能性は十分ある。だが、同じ3年を過ごせば、同じ轍(てつ)を踏みかねない。そこは日本サッカー協会の技術委員会が新監督を導いていく必要がある。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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