ギリシャが誇るべき12人目の選手たち 代表チームの応援はプライスレス

停電にも負けず、必死で応援

サポーターの応援も届かずPK戦の末コスタリカに敗戦。歓喜を味わうことはできなかった 【写真:ロイター/アフロ】

 私は今、休暇でギリシャのケファロニア島に来ており、その最も大きな町であるアルゴストリでギリシャ対コスタリカを観戦した。アテネやテッサロニキといった大都市で催されたパブリックビューイングとは無縁のため、大きなスクリーンを用意してくれた『アンティカ』というカフェで地元のサポーター数百人と決戦を見守ることにした。だが、キックオフまで1時間を切ったところで、私たちのいた地区が停電になってしまった。私はその店を飛び出してTVがついている店を探した。私と同じように多くの人が「ギリシャサッカーにとって最大の夜になぜ……」という焦りといら立ちを覚えながら、町中をうろついていた。もしかすると、PK戦での敗退を示唆する不吉なお告げだったのかもしれない。私はなんとか大きなスクリーンを設置している店を見つけて飛び込み、混雑している店内でイスを見つけると、学生グループに混じってスクリーンの目の前にポジションを取った。

「今の代表は別に特別なチームじゃないよ。チーム内に摩擦が生じているしね。みんな、陰謀を企てた(コンスタンティノス・)カツラニスの出場を良く思っていないんだ。何千人というファンがカツラニスを外すように署名したほどさ。それでも、彼らは僕らの代表チームなんだ。他にチームはないからね。だから僕は心の底から応援している。今夜、勝ってくれると信じている」と、学生グループの1人、ニコスくん(24歳)は熱く語っていた。

 だから私も、限定2時間と決めて、ギリシャ代表への抵抗感をすべて拭い去り、ギリシャ代表のサポーターとして試合を見ることにした。試合中は本気で応援したのだ。だが、ご存じの通り歓喜を味わうことはできなかった。試合後、お店にいた他の客もおとなしく帰路につき、テオファニス・ゲカスのPK失敗をけなしながら暗闇に消えて行った。チームは敗れたとはいえ、私はソクラティス・パパスタソプーロスが後半終了間際に同点ゴールを決めた際に、皆で一緒に飛び跳ねたあの瞬間を忘れないだろう。今回のW杯の一番の思い出の1つとなった。

サマラスの心温まるストーリー

 最後に、ギリシャ代表とある少年の心温まるストーリーをご紹介しよう。ゲオルギオス・サマラスと彼の所属していたセルティックの熱狂的なファンであるジェイ・ビーティー君は、コートジボワール戦でのサマラスのゴールに歓喜したという。ダウン症候群のジェイ君は以前、セルティックがスコットランドリーグを制した際に、サマラスと一緒にピッチ上で優勝の喜びを分かち合ったことがある。そこでサマラスは代表のチームメートとともに、ジェイ君とその家族をレシフェでのコスタリカ戦に招待することにした。

 残念ながら、ジェイ君はちょうど家族と共に米国で夏休みを過ごしており、コスタリカ戦の応援には駆けつけられなかった。だがしかし、これからも彼らの固い絆が途切れることはないだろう。

翻訳:田島大(フットメディア)

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著者プロフィール

1961年2月13日ウィーン生まれ。セルビア国籍。81年からフリーのスポーツジャーナリスト(主にサッカー)として活動を始め、現在は主にヨーロッパの新聞や雑誌などで活躍中。『WORLD SOCCER』(イングランド)、『SID-Sport-Informations-Dienst』(ドイツ)、日本の『WORLD SOCCER DIGEST』など活躍の場は多岐にわたる

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