W杯の呪縛と戦うハリルホジッチ監督 アルジェリアを率いて3度目の正直を狙う

初の決勝トーナメントを目指す「砂漠のキツネ」

韓国戦では見事な手腕を発揮。アルジェリアを決勝トーナメントに導くことはできるか 【写真:ロイター/アフロ】

 だが、ここでは終わらない。信じられないかもしれないが、今年の1月にも、ハリルホジッチには解任のうわさが流れたのだ。アルジェリアを率いてブラジル大会出場を決めていたハリルホジッチだが、フランスのマスコミに語ったとされるコメントが問題となった。「大会後の辞任」や「誰にも自分の仕事を邪魔させない」といった言葉が報じられ、「アルジェリアが決勝トーナメントに進めると聞くと笑えてくる」というコメントまで伝えられた。だがハリルホジッチはこれらの言動をきっぱりと否定。ようやく事態も収束した。

 今、ハリルホジッチが率いる「砂漠のキツネ」(アルジェリア代表の愛称)は、グループHの第2戦で韓国を下し、ベスト16進出が現実味を帯びている。韓国代表がベルギーに大勝しない限り、最終戦でロシアと引き分けるだけでグループ突破が決まるのだ。アルジェリアはW杯4度目の出場にして、初の決勝トーナメント進出が見えている。そして、ハリルホジッチも大舞台で見事な手腕を発揮。初戦のベルギー戦を1−2で落とすと、続く韓国戦では先発メンバー5名を入れ替える大胆な采配。これが見事にはまり、素晴らしいパフォーマンスで4−2の勝利を収めた。元イングランド代表のゲーリー・リネカーが「アルジェリアはすごいね。キレと素早さとパワーがあり、頭脳的でコンパクトだ」とツイッターで賛辞を送るほどの内容だった。

 ハリルホジッチは大胆なテコ入れについて、こう説明した。

「戦術的な判断だ。韓国戦に向けて入念な準備をした。彼らの戦い方を分析し、フレッシュな選手が必要だと考えた。後半はいまいちだったが、前半はほぼ100点の内容だった。韓国はとてもうまく組織化されたチームなので、われわれは彼らが苦手とするであろう戦術を選んだ。われわれの4点目は教科書通りのゴールだった。ブラジルのファンも大いに楽しんでくれたようだ。この勝利は本当に大きな意味を持つ。これをアルジェリアの国民に捧げたい。今のわれわれに限界などないんだ」

 バヒド・ハリルホジッチは、ようやくW杯の呪縛から解放されようとしている。まさに3度目の正直だ。

華麗なテクニックは今も健在

 おまけに。

 日本の皆さんは代表チームの敗退に落胆しており、じきにW杯への興味をなくすかもしれないが、この記事を最後まで読んでくれた方にプレゼントがある。韓国対アルジェリアで、テレビ放送には乗らなかった1つの面白いシーンをお教えしよう。前半43分、会場に来ていた観客だけがそれを目の当たりにした。アルジェリアのベンチにボールが飛んでくると、ハリルホジッチ監督はそれを華麗なヒールキックで選手の元に戻したのだ。彼がベンチ前で軽やかな足技を見せるのは、これが初めてのことではない。「Vahid Halilhodzic entraineur de l’ Algerie tres bonne technique」とYouTubeで検索して映像を見ていただきたい。「バハ」の愛称で親しまれるハリルホジッチの芸術的なテクニックを堪能できるはずだ。

翻訳:田島大(フットメディア)

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著者プロフィール

1961年2月13日ウィーン生まれ。セルビア国籍。81年からフリーのスポーツジャーナリスト(主にサッカー)として活動を始め、現在は主にヨーロッパの新聞や雑誌などで活躍中。『WORLD SOCCER』(イングランド)、『SID-Sport-Informations-Dienst』(ドイツ)、日本の『WORLD SOCCER DIGEST』など活躍の場は多岐にわたる

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