錦織圭、真価が問われるウィンブルドン 注目は初戦 芝での課題が全て試される
四大大会の中でもっとも苦戦
ウィンブルドンで過去最高の4回戦進出以上の結果を目指す錦織 【原田亮太】
理屈ではない。整合性でもない。商業主義や合理性に背を向けた、良い意味での偏屈さにこそ、“テニスの聖地”の神聖が宿るのだろう。
平成生まれで13歳から米国育ちの錦織圭(日清食品)が、果たしてそのような聖地の格式に、いかほどの畏敬の念を抱いているかは分からない。ただ、4つあるグランドスラムのうち、錦織が唯一、4回戦以上に進めていないのがウィンブルドン。
「ここで活躍したいという想いは、今のところ、どのグランドスラムよりもある」との言葉に、この大会に懸ける情熱が色濃く映し出されている。
先述したように、錦織のウィンブルドンでのこれまでの最高成績は、昨年と一昨年の3回戦進出。他の大会ではベスト8や4回戦が定位置になっているだけに、本人も「これまで芝ではあまり良い成績を残していないので、今年は結果を出したい。昨年以上には、もちろん行きたいです」と語気を強めた。
“芝”で錦織が苦しめられた3つの要因
同時に、ウィンブルドンの“芝”というコートの特性が、彼の長所を殺していた側面も否めない。
錦織本人は、芝の難しさの最大の要因として「フットワーク」を挙げている。芝は滑りやすいために、走って止まり、打って再び走り出すその一歩目への初動が、遅れやすい。錦織の最大の持ち味である俊敏さと機動力が失われ、相手に一発でウイナーを奪われる場面も増えてしまう。
また、芝ではボールが滑るように低く弾むため、「常に重心を低く保つことが大切」と錦織は言う。頭では分かっていても、試合がかさみ疲労がたまれば、どうしても試合が進むにつれ腰が浮いてきてしまう。展開が早いため試合時間こそ短いが、クレーとはまた異なる体力が求められるのが、芝の難しさであろう。
さらにサーブの優位性の高さも、錦織を苦しめてきた要因だ。球足の速い芝では、総じてサーブの威力が増す。サービスゲームを落としても、それ以上にブレークすることで勝利を手にしてきた錦織には、やはり不利なコートだと言えるだろう。
その錦織が今季は、前哨戦のゲリー・ウェバー・オープンでベスト4進出の好成績を収めている。準決勝でロジャー・フェデラー(スイス)に破れたものの、試合を通じ2本しか相手にブレークポイントを与えず、第2セットはタイブレークにまで持ち込んだ善戦である。