W杯ベスト4へ 自信みなぎるベルギー 育成強化で作り上げた「楽しい」サッカー
トレセンによって一貫した“代表チーム”を作る
ダークホース的存在に上げられているベルギーは、2000年代から始めた育成の成果が結実している 【写真:ロイター/アフロ】
フランスからはエリートサッカー選手養成所『クレールフォンテーヌ』を参考に、地域トレーニングセンターを8カ所作った。トレセンは“チーム”ではないから、徹底してドリブル、パス、シュートなどの個人のための練習に時間を割くことができる。
「オランダ人は対人のない、ドリル的な練習が嫌いでやりませんが、ベルギーはやりますよ」と協会関係者が語ってくれたことがある。
地域トレセンの頂点に立つのが各年代代表チームだ。各年代、4−3−3でフォーメーションを統一し、最終ラインからしっかりボールをつなぐ、ゾーンサッカーが徹底されている。
例えばアザールやオリギのように、ユース世代でフランスのリールへ移籍した選手でも、ベルギーの年代代表チームでプレーすることによって、ベルギーの育成メソッドを体得することができるようになっている。
地域の対立もサッカーでは先に解決
ベルギーサッカー協会が、自国のサッカーの鏡として期待しているのが代表チームだ。彼らは「ベルギー代表はオーガニゼーション(組織)がよく、しっかり前線からプレスをかけ、個の力も強い」と胸を張る。
しかし、これは筆者個人の感想だが、前線からプレッシングをかけても、4バックが後ろに残りがちなので、ベルギー代表は全体がコンパクトにならず、プレスをくぐられて相手にボールを運ばれることが多い。ユース世代で進めているベルギーらしいサッカーが、A代表チームでも表現されるようになるには、もう少し時間が必要なのではないか。
ベスト4に入った86年より潜在能力は高い
しかし、ベルギー国民が夢見るのはもっと上。1986年にメキシコW杯でベスト4に入った時より、今のベルギー代表は選手のポテンシャルが高いと彼らは思っている。
その声にあおられているのか、それとも彼ら自身の中に手応えがあるのか、アルジェリア戦前日の16日、「僕たちは少なくともそこ(86年のベスト4)まで行きたい」と語った。
ただ、今のベルギー代表はとても若いチーム。36歳のDFダニエル・バン・ブイテンの次に高齢なのは28歳のDFトーマス・ベルメーレンだ。ベルギーのピークは2年後のユーロ2016(フランス)にくるという声も多い。かつてベルギー代表の名選手としてならしたマルク・デフリースは「グループリーグ突破は問題ないだろう。しかし、決勝トーナメント1回戦の相手はドイツかポルトガル。ベルギーにとっては難しいチーム。ベスト8進出が目標になるだろう」と見ている。
だが、ベルギー代表にとって、ブラジルW杯の本当のスタートはグループリーグが終わってから。とても12年ぶりのビッグイベント参加とは思えぬ自信が、今のベルギーにはみなぎっている。