早くも窮地に追い込まれたポルトガル ドイツに大敗も、夢はまだ終わっていない

市之瀬敦

残り2試合で連勝なるか?

ミュラー(右)への頭突きで退場となったペペ(左)は米国戦に出場できない。負傷者も出ており、連勝が必須の残り2試合は厳しい展開が予想される 【写真:ロイター/アフロ】

 思いもよらぬ惨敗を喫し、W杯初制覇という大きな夢を見る前に激しく出はなをくじかれた感のあるポルトガル。0−4という結果は、ポルトガル代表にとってW杯における最悪の敗戦であり、これだけの大差をつけられるのは1983年4月、ロシア(当時はソ連)に首都モスクワで0−5と敗れて以来のことである。精神的ダメージは小さくはないはずだ。

 しかも、退場となったペペは次の米国戦では起用できず、負傷退場したH・アウメイダとコエントランも10日間はプレーできないという。さらに、気になるのは、前日記者会見でベント監督がFIFA(国際サッカー連盟)を批判していたように、まだ日も高く気温も上がっている午後1時のキックオフで始まったゲームの大半を10人で走らされたことによる疲労である。大敗のショックに上乗せされる暑さによる疲労。次の対戦国(日本時間23日)である米国は最後まで走りきるチームで、02年日韓大会の初戦では2−3と苦杯をなめさせられた記憶も残る嫌な相手だ。ポルトガルにとっては、苦しい展開が予想されるのである。

 そう言えば、前日記者会見の席で、主将のロナウドは「今年はポルトガルの年になる」と予言していた。だが、ドイツ戦の出来を見るだけでは、ポルトガルの年はもちろんのこと、ロナウドの大会にもなりそうもない。ライバル、ネイマールもリオネル・メッシも初戦でゴールを決め、しかもチームを勝利に導いているのだ。

 ポルトガルに残された道は、残る2試合で2勝すること。勝ち点6を取ればベスト16への希望はつながるのだ。現ブラジル代表監督で、04年のユーロでポルトガルを準優勝に導いたフェリペ・スコラーリ監督はさっそく、「10年前も初戦を落としながら(編注:ギリシャに1−2で敗れた)、ポルトガルは決勝まで勝ち上がった」という励ましのメッセージを送ってくれた。

 そこまでさかのぼらずとも、12年のユーロでも、やはり初戦でドイツに敗れた後、デンマークとオランダという強豪2カ国を下し、不可能に見えたことを可能にしてみせ、ベスト4まで生き残った。国民の間には早くも悲観ムードが漂い始めたが、ポルトガル代表の夢がすでに終わってしまったと考えるのは早すぎるだろう。ポスティガも「2012年の精神を思い出そう」と述べた。追い詰められてから真価を発揮する。ポルトガル人選手たちの復元力を信じたいと思うのである。

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著者プロフィール

1961年、埼玉県生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科教授。『ダイヤモンド・サッカー』によって洗礼を受けた後、留学先で出会った、美しいけれど、どこか悲しいポルトガル・サッカーの虜となる。好きなチームはベンフィカ・リスボン、リバプール、浦和レッズなど。なぜか赤いユニホームを着るクラブが多い。サッカー関連の代表著書に『ポルトガル・サッカー物語』(社会評論社)。『砂糖をまぶしたパス ポルトガル語のフットボール』。『ポルトガル語のしくみ』(同)。近著に『ポルトガル 革命のコントラスト カーネーションとサラザール』(ぎょうせい)

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