“ホーム”のため祖国と戦うエドゥアルド クロアチア代表ストライカーの特別なW杯

好感が持てる“ドゥドゥ”のエピソード

「ハートはクロアチアと共にある」と話すエドゥアルド(右)。開幕戦ではどのようなプレーを見せるのか? 【Getty Images】

 31歳になったエドゥアルドは、これまでクロアチア代表で61試合29ゴールという数字を残している。ストライカーである彼には、当然のようにこんな質問もぶつけられた。ブラジル戦でゴールを決めたら喜ぶのか?

「いいや、喜ばないよ。もちろん、その場の勢いでどんな反応をしてしまうか分からないが、現時点では喜ばないことに決めている」

 チームメイトや友人から“ドゥドゥ”の愛称で親しまれているエドゥアルドは、非常に好感の持てる男だ。私は幸運なことに、先日ザグレブのホテルで2時間ほどインタビューする機会を得ることができた。私は彼が来るのを待ちながら、同じようにインタビューの約束を取りつけていたブラジル人のTVプロデューサーやカメラマンと雑談をしていた。そこで彼らに、何分くらいの撮影を予定しているかを聞くと、およそ30分だと答えた。だが、エドゥアルドは彼らの撮影に1時間半以上も協力し、インタビュー以外にも談笑していた。そしてようやく私の順番が回ってきた。すると彼は、私のインタビューにも時間を気にせずに付き合ってくれたのだ。だからこそ、彼が「ハートはクロアチアと共にある」と話したとき、それがリップサービスではなく真意だとすぐに感じ取ることができた。

ここが“ホーム”だと思えたから

 それもそのはず。もし16歳の彼が代理人に連れられて、ちょうど三浦知良も在籍していたディナモ・ザグレブ(現クロアチア・ザグレブ)に入団していなければ、彼の選手キャリアがどうなっていたかは誰にも分からない。エドゥアルドはクロアチアで、選手として、人間として成長し、最高峰の舞台に立つ選手となった。さらに言えば、彼はクロアチアでアンドレア夫人と出会い、05年に結婚して2人の子どもをもうけている。そして多くの友人を作り、クロアチアのファンから愛される存在になった。07年にはアーセナルと契約し、その後はシャフタール・ドネツクでもプレーするなど、輝かしいキャリアを送ってきた。08年に負ったすねの骨折という悲惨なけがさえなければ、彼のキャリアは今以上に輝かしいものになっていたはずだ。

 だから彼のことを、自分のプロキャリアの都合だけを考えてクロアチアの市民権を取得した選手と見るのは間違っている。「そう考える人がいるかどうか分からないけど、間違いなくそうじゃないよ。興味本位の決断ではなかった。一晩で決めたことでもない。5年間ザグレブに住んだ末に出した答えだった。私はここが“ホーム”だと思えたし、クロアチアにはお世話になったから、こういう決断に至ったのさ」

 だからこそ、「頑張れ、ドゥドゥ。W杯を楽しむんだ」と言ってあげたい。ところで、実はクロアチア代表メンバーには、ブラジル人がもう1人いる。ニコ・クラニチャール、ミラン・バデリ、イボ・イリチェビッチといった中盤の選手にけが人が続出したため、ブラジル生まれのジョルジ・サミール・クルス・カンポスが23名の代表メンバーに招集されることになった。27歳の攻撃的MFサミールはディナモ・ザグレブで7年間プレーし、現在はヘタフェに在籍。これまでに代表戦5試合に出場している。

翻訳:田島大(フットメディア)

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著者プロフィール

1961年2月13日ウィーン生まれ。セルビア国籍。81年からフリーのスポーツジャーナリスト(主にサッカー)として活動を始め、現在は主にヨーロッパの新聞や雑誌などで活躍中。『WORLD SOCCER』(イングランド)、『SID-Sport-Informations-Dienst』(ドイツ)、日本の『WORLD SOCCER DIGEST』など活躍の場は多岐にわたる

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