W杯に臨むギリシャの最終形をチェック 抑えておきたいキーマンと戦術の特徴は?

河治良幸

強みは堅守速攻とメンタリティー

W杯開幕目前、23人のメンバーや親善試合からギリシャ代表の最終形をチェックしたい 【Getty Images】

「ギリシャの強みはチームスピリット。選手たちは試合でも練習でも代表チームのために全力を尽くす」

 そう語るポルトガル人のフェルナンド・サントス監督はもともと攻撃的なサッカーを好むことで知られたが、ギリシャ代表では堅実な守備をベースとしたチーム作りを進めてきた。ドイツ人の名将オットー・レーハーゲルに率いられ、ユーロ(欧州選手権)2004で奇跡的な優勝を果たした当時から、守備スタイルは徹底したマンツーマンから堅固なブロックに変化したが、勝利のために個人を犠牲にできる献身性と勝負を諦めないメンタリティーは現在にも引き継がれている。

 傑出した攻撃のタレントがいるわけではないが、組織的な堅守速攻で接戦をものにする。彼らの強みを発揮したのがベスト8に進出したユーロ2012だ。主将を務めるゲオルギオス・カラグーニス(フラム/イングランド)は「われわれは決して強者ではないが、勝利のために全力を捧げる」と語ったが、ギリシャは大方の予想を覆してロシア、チェコ、そして開催国ポーランドと同居した組を見事に突破した。結局、準々決勝でドイツに敗れてしまった(2−4)が、彼らのチームワークとスピリットを改めて示すこととなった。

 そのユーロ2012から、さらに堅守速攻に磨きをかけたギリシャ。ワールドカップ(W杯)ブラジル大会の欧州予選はプレーオフも含め12試合で6失点、しかも流れの中からは1失点もしていない。日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督はギリシャについて「相手の良さを消すサッカーをしてくる。精度の高いカウンターと団結力のある守備でやりにくいチーム」と分析する。

 直前のテストマッチは5月31日のポルトガル戦を皮切りに、3日にナイジェリア、6日には南米のボリビアと戦った。結果は前の2試合がスコアレスドロー、ボリビア戦が2−1で勝利となった。守備の堅さは健在で、ポルトガル戦とナイジェリア戦では3月5日の韓国戦(0−2)で見せた“緩さ”を全く見せなかった。

先発メンバーと基本戦術は?

 2日に発表された23人のW杯メンバーには欧州予選で守備の中心として活躍したディミトリス・シオバス(オリンピアコス/ギリシャ)、内田篤人の所属するシャルケ04(ドイツ)でプレーするキリアコス・パパドプーロスというディフェンスで期待できるタレント2人が外れた。またギリシャでも1、2を争うテクニシャンとして実力が認められるソティリス・ニニス(PAOK/ギリシャ)も欠場する。それでもギリシャの基本スタイルを高いレベルで遂行できる陣容はそろっている。

 先発メンバーの有力候補は、おそらくポルトガル戦で先発した選手たちだろう。GKはオレスティス・カルネジス(グラナダ/スペイン)、DFラインは右からバシリス・トロシディス(ローマ/イタリア)、ソクラティス・パパスタソプーロス(ドルトムント/ドイツ)、コンスタンティノス・マノラス、ホセ・ホレバス(共にオリンピアコス)、中盤がヨアニス・マニアティス(オリンピアコス)、アレクサンドロス・ツィオリス(カイセリスポル/トルコ)、コンスタンティノス・カツラニス(PAOK)、FWはディミトリオス・サルピンギディス(PAOK)、コンスタンティノス・ミトログル(フラム)、ゲオルギオス・サマラス(セルティック/スコットランド)だ。

「4−1−4−1」の組織的な守備で相手の縦を切りながら、ブロック内に強引に入ってきたところを挟み込んでボールを奪うのがギリシャの守備スタイル。そこから繰り出す攻撃は、前線のポストプレーを起点として、2列目の選手が前を向いてボールを持てば、果敢に仕掛けてミドルシュートやクロスにつなげようとする。

 カウンターが主体と言っても露骨にロングボールを蹴り込んで来るわけではないが、シンプルに素早く縦に仕掛けるスタイルは高い位置で試合を進めたい日本のようなチームにとって厄介だ。特に左サイドの長身FWサマラスにボールが入ると、そこから鮮やかなサイドチェンジ、ボールキープからカラグーニスを走らせるパスなど、バリエーションのある攻撃を仕掛けてくる。

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著者プロフィール

セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は1万枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。「タグマ!」にてWEBマガジン『サッカーの羅針盤』を展開中。

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