W杯に臨むギリシャの最終形をチェック 抑えておきたいキーマンと戦術の特徴は?

河治良幸

気になる攻撃のキーマンは?

最大の得点源は飛び出しと空中戦に優れるミトログル。長身選手も多いため、セットプレーにも注意したい 【Getty Images】

 最大の得点源は欧州予選で5得点を記録したミトログルだ。オリンピアコスでゴールを量産し、今年の冬にフラムへの移籍を果たしたが、度重なる負傷で消化不良のシーズンとなってしまった。一時はW杯の出場も危ぶまれたが現在は回復。世界の舞台で大暴れを狙っている。左利きのミトログルは飛び出しと空中戦の両面に優れ、一瞬でマークを外す動きも悪くない。

 カウンターからゴール前に入って来る動きには迫力があり、相手DFは断固として挑んでいかないと、浴びせ倒されるような形でゴールを決められてしまう。豪快なゴールのイメージが強いが、時に技巧的なシュートでGKの頭上や脇を破ることもある。少しでも隙を見せると躊躇(ちゅうちょ)なく突いてくる危険な選手だ。欧州予選の途中までエースに君臨していたテオファニス・ゲカス(コンヤスポル/トルコ)はミトログルにその座を奪われたが、ゴール前の勝負強さとシュート力は健在で、本大会ではジョーカーとして重用されそうだ。

 右サイドで攻撃を活性化させるのはサルピンギディス。献身的な守備から攻撃に転じれば素早く意識を切り替え、鋭い仕掛けや飛び出しを見せる。彼が中に入る動きを見せると、その外側から右サイドバック(SB)のトロシディスが駆け上がって来る。左SBのホレバスは基本的に攻守のバランスを取ってディフェンスラインに残るが、クロスのレンジが長く正確で、セットプレーの左足キッカーを任されるほどだ。

 ウイングにはヨアニス・フェトファツィディスという個の打開力に優れた選手も控える。ジェノア(イタリア)所属のサイドアタッカーは周囲とのコンビネーションや守備の貢献性こそサルピンギディスに譲るが、カットインからのミドルシュートは威力があり、彼が出てきたら守る側は一層の警戒が必要だ。

鍵を握るのはサントス監督の采配

 中盤の3人は高い守備意識を持つ選手たち。アンカーのツィオリスを軸として、マニアティスやカツラニスが攻守に渡りハードワークを見せる。ベテランのカラグーニスはベンチスタートの試合も増えているが、ここという勝負どころで重用されることに変わりはなく、闘志溢れるプレーは周りの選手たちを鼓舞する。中盤のユーティリティープレーヤーであるパナギオティス・コネ(ボローニャ/イタリア)は攻撃に変化を付けるテクニックの持ち主で、途中から出てくると捕まえるのは容易ではない。

 ディフェンスラインはドルトムントで大きく成長したパパスタソプーロスが統率役となる。欧州予選の相棒だったシオバスは欠場が決まったが、若いマノラスは大柄な割に機動力が高く、チャレンジ&カバーの柔軟性はむしろ高まった感がある。守護神のカルネジスはミドルシュートに鋭い反応を見せるGKで、予選の突破を支えた1人だ。

 守備的なイメージが強いギリシャだが、ゲカス、フェトファツィディス、コネなどベンチには攻撃的な選手がそろうため、サントス監督の采配が勝利の鍵を握る。相手の守備が間延びしがちな後半は得点の可能性も高まる。前半は0−0で終え、相手の焦りを誘ってカウンターのチャンスを広げる。そうなるとギリシャのペースだ。

 もう1つギリシャの強みとなるのがセットプレーの得点力だ。先にあげたスタメン候補11人のうち9人が180センチを超える。キッカーは右足がサマラスかカラグーニス、左足がホレバスとなるが、一発のヘディングシュートはもちろん、競り合いのこぼれ球をミトログルやサルピンギディスが押し込む形も得点パターンとなる。

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著者プロフィール

セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は1万枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。「タグマ!」にてWEBマガジン『サッカーの羅針盤』を展開中。

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