トゥーレ兄弟の野望、日本戦への自信 コートジボワールがW杯で目指すこと

コートジボワールが世界に誇るコロ(右)とヤヤ(左)のトゥーレ兄弟。彼らがW杯で抱く野望とは(写真はコロがマンチェスター・シティに所属していたときのもの) 【写真:Press Association/アフロ】

 コートジボワール代表はワールドカップ(W杯)過去2大会連続で“死の組”に入り、グループリーグ敗退を余儀なくされた。ディディエ・ドログバ(ガラタサライ/トルコ)、コロ・トゥーレ(リバプール/イングランド)とヤヤ・トゥーレ(マンチェスター・シティ/イングランド)の兄弟ら、欧州の強豪クラブで実績を残しているタレントを擁しながら、この結果に終わったことは不運と言える。しかし、3回目の出場にしてようやくチャンスが巡ってきた。グループCで対戦するのは日本、コロンビア、ギリシャ。過去2大会と比べれば、いわゆる列強国がいないだけに、初の決勝トーナメント進出は十分に射程圏内だろう。

 トゥーレ兄弟もそれを理解している。兄のコロが「潜在能力を鑑みると、僕らは大きな野望を抱くべき」と自信を見せれば、弟のヤヤも「我々は勝つために必要な能力、真のチャンスを擁している」と自信を見せる。2人が最重要視しているのは、初戦となる日本戦だ。「我々にとって大会最初の試合。出だしから僕らの野心を示して見せる」(コロ)、「我々が1−0で勝つと予想している。そうなれば僕らのW杯の進撃に弾みをつけ、完璧なスタートとなるだろう」(ヤヤ)。コートジボワールが世界に誇る兄弟に、W杯への思いを語ってもらった。

コロ「僕らは大きな野望を抱くべき」

――今回のブラジルW杯で、エレファンツ(コートジボワール代表の愛称)は何を目指すのか?

コロ「すべてだよ!」

ヤヤ「コロはこういうやつなんだ。コロの食欲はそれはすさまじいのさ(笑)。小さかった頃、彼はすでにすべてを食べたがっていたからね」

コロ「真面目に話すけど、この代表の潜在能力を鑑みると、僕らは大きな野望を抱くべきだと思う。コートジボワール代表選手の多くがヨーロッパのビッグクラブでプレーしている今、我が代表は本当に重みと実力を持つチームなのだと強く信じる必要がある。そして何より、再び後悔を胸に戻ってくることは避けなければならない」

ヤヤ「同じグループには日本、コロンビア、そして華やかさはなくても実力的に堅固なものを持つギリシャがいるわけだから、必然的に非常に競った戦いとなるだろう。僕は常に、人々がグループ最弱とみなしているチームを警戒しているんだ。厳しい戦いになるのは分かっているけど、結局のところ自信は持っているよ。我々は勝つために必要な能力、真のチャンスを擁している。だからグループを1位で終えることだってあり得ると、僕は思っているんだ。グループ首位になることは、そのあと大会をさらに勝ち進んでいくために必須のことでもある。2010年のガーナのように、準々決勝に進出することは僕らの射程距離内の目標だ。さらにその先まで勝ち進むことさえ、可能だと思う。決勝まで行けないと、誰が言い切れる? それは我々をひと時代の終わりにきた、高年齢化しつつあるチームと呼んでいる人々に対する素晴らしい返答になるだろう。何人かの選手にとって、ブラジルW杯が代表と臨む最後の大舞台になるかもしれない、というのは事実だよ。でも反対にそれは追加的なモチベーションとなることなんだ」

――コートジボワール代表には、本国のアカデミー育ちの者と、フランスなど外国で育った者たちが混ざり合っている。君たちはどのような経緯でコートジボワールの名高いミモサ・アディジャンのアカデミーにやってきたのか?

コロ「コートジボワール育ちの仲間たちの多くと同じように、僕は地区間のトーナメントの際に、ジャン=マルク・ギルー(アカデミーの責任者であるフランス人指導者)の目に留まったんだ。僕は、アルーナ・ディンダンと同じときに、2週間のテストキャンプを受けるということでアカデミー参加を許可された。以来僕は、ディンダンを兄弟のひとりとみなしているんだよ。当時、僕は15歳(1996年)。そして結果的に、入学を許されたんだ。それが、僕の冒険の始まりだった。僕にとって、それは何より思わぬ幸運だった。というのも僕の両親には、学校のお金を払う財力がなかったんだ。アカデミーのおかげで、サッカーだけでなく学校の授業も受けることができるのだと、僕は知っていた。もし父と母に学費を払うお金があったなら、たぶん僕はプロサッカー選手になっていなかったのではないかと思うよ」

ヤヤ「僕は、その少しあとに参入した。最初、兄についていきたいと思っていたのは事実だよ。僕は兄に、僕も一緒に連れていってとずっと懇願していた。でも、当然ながら、兄はダメだと言ったよ。だから僕も彼のように、地区間の試合での選出を通してアカデミーに入学することになったんだ。いずれにせよ、ギルー・コーチは、誰の弟とかいう名前、コネをベースにスカウトを行うには、あまりに正直すぎる人だった。だから、兄がいるからと特別待遇を受けることは全くなかったね」

ヤヤ「一緒に3回連続出場なんて信じられないこと」

――小さい頃、2人で一緒にW杯でプレーすることを想像したことはあったのか?

ヤヤ「一緒にW杯を戦うなんて想像したことは、一度もなかったよ。それなのに、2人で一緒に3回連続出場だなんて、実際のところ、とても信じられないようなことだ」

コロ「非常に幸運なことだし、2人にとってこうも長く続くなんて、ある意味、予想外のことでもある。3大会連続で一緒にW杯に出場した兄弟なんてそうたくさんいないんじゃないかと思うから、これはほとんど記録的な出来事ではないかな」

――兄弟と同じチームでプレーするというのは、アドバンテージなのか、それとも逆にやりにくいものなのか?

ヤヤ「僕らが代表チームで一緒にプレーするようになってからもう随分たつ。僕らはまた、マンチェスター・シティでも少しの間、一緒にプレーした。お互いを知り尽くしているから、プレー面でかなり時間を節約できるよ」

コロ「今、ヤヤを怒鳴りつけるときにはちょっぴり注意しなければならないよ。こいつ、日に日に、僕の叱責や忠告を許容しなくなってきてるからね(笑)」

――コロとヤヤ。君たちの名前は、厳密にその通りの意味なのか?

コロ「もちろんだよ。僕らのジャグバナ民族の言葉で、“コロ”は『双子の後に来る者』だ。実際、僕は双子の兄と姉のあとに生まれたんだよ。でも、申し訳ないが、“ヤヤ”が一体何を意味するかについては、僕は全く知らない」

ヤヤ「これもまた、家族と関係あるものだ。ヤヤは『兄』という意味なんだよ。僕のあとに、弟と妹がいるから、当然のネーミングさ(兄弟6人、姉妹2人)。その弟はイブラヒムといって、今ニースでプレーしているんだ」

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著者プロフィール

1968年3月3日生まれ。『レキップ』紙を経て、98年より『フランス・フットボール』誌の記者として活躍。フランスのほかアフリカサッカーを得意分野とし、かの地に広いネットワークを持つ。特にドログバと親交が深く、取材がなくても電話で近況を報告し合う仲。2007年には同誌上でチェルシー批判を含むドログバの激白インタビューを発表し、国内外でセンセーションを巻き起こした。趣味は自分の子供と遊ぶこと、テニス、文学

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