ノーヒッター岸孝之が語る好調の理由、考え方を変えて“復活”した変化球とは?

ベースボール・タイムズ

2日のロッテ戦で無安打無得点を達成。捕手の炭谷(手前)と抱き合う岸 【写真は共同】

 白星はリーグ3位タイの5勝、防御率は同3位の2.28(ともに5月29日時点)と、最下位に沈む埼玉西武で孤軍奮闘しているのが岸孝之だ。2日の千葉ロッテ戦で史上78人目、89度目のノーヒットノーランを達成すると、17日の東北楽天戦では無四球完封を記録。プロ入り8年目の今季、29歳の右腕が快投を続ける背景には昨年の2軍落ちから始めたトレーニングとある球種の“復活”があった。

2軍で始めたトレーニングが効果大

――今季のピッチングを見ていると、とにかく真っすぐが良いと感じます。ご自身の感触はどうですか?

「いいな」っていう割合は高いかなと思います、今年は。試合によって違いますけど、半分以上は良いですね。

――炭谷銀仁朗捕手は真っすぐについて、「伸びもあるし、精度も高い」と話していました。岸投手としてはいかがですか?

 力をうまく伝えられている感じはします。スピードも、「(スピード)ガンがおかしいんじゃないか」と感じるくらい出ていますね。スピードはそんなに気にしていないですけど。

――力が伝わっているのは、コンディションが良いのか、フォームが良いのでしょうか?

 その辺ですかね。体の使い方が、たぶんうまくできていると思います。

――メディアの人間としては、「今年は何か変えたんですか?」と聞きたくなります。

 変えていないですよ。去年から、そういう動きを意識したトレーニングをしてきたので、成果が出ているんじゃないかな。下半身の動き方だったり、基本ですね。股関節とか、特に下半身です。

――昨シーズンは5月5日に登録抹消され、2週間近く2軍で再調整する期間がありましたね。昇格2戦目、25日にナゴヤドームで行われた中日戦で完封し、炭谷捕手は「何かつかんだものがあったのでは?」と話していました。

 その前、(18日に)復帰した巨人戦から悪くはなかったです。ファームに落ちていた期間中に、2軍のコーチの方といろいろ相談して、トレーニングして、それをずっと継続しているので。今年どうこう(という話)ではないと思います。

腕を振ることでスライダーが復活

――配球面について聞かせてください。近年は以前よりカーブの割合が減り、スライダー、チェンジアップが増えているように感じます。

 増えているというか、もともと持っていたスライダーがここ何年か、僕の中で使えない状態で、選択肢としてありませんでした。それが何となく、銀(炭谷)の中でも「使えるな」っていうイメージが、ちょっとは出てきたんじゃないかな。

――炭谷捕手はスライダーがある分、「試合の序盤、カーブを隠しておける」と言っていました。

 それも全部、スライダーを投げられるようになる練習をしてきたおかげです。それで去年、やっとつかんだので。

――先ほど話に出た、下半身の使い方が関係しているのですか?

 いや、スライダーはまた別です。どうやったらいいか、ずっと考えてやっていました。以前は、スライダーは「曲げる」というイメージだったんですよ。それをやめました。今、曲がらないときはカットボールみたいな感じ。「真っすぐ、真っすぐ」と思いながら、真っすぐみたいに腕を思い切り振ることしか考えていません。

――曲がらなくても、バットの芯を外せばいい?

 そんなに大きく曲がらなくてもいいから、とりあえず真っすぐと同じように腕を振って、「ちょっと曲がって芯を外れればいいかな」っていう考え方ですね。バッターに「スライダーもあるんだな」と思われればいいかな、というくらいです。

――スライダーを良くするために、考え方を変えたのですか?

 曲げる意識では全然良くならなかったので、「とりあえずやってみよう」と思って。それが去年から、結構良い方向にきました。それがバッターからしてどういう感じなのかは分からないですが、見やすいとか、打ちやすいとかは分からないですけどね。

――投球の幅は広がりますよね?

 それがあったのがプロ入り1年目、2年目だったので。もともとはあった球種です。

――いきなり投げられなくなったんですか?

 いや、スライダーにスピードを求めているうちに投げ方が分からなくなって、投げなくなりました。

――逆にカットボールっぽく投げるようにして、使えるボールとして戻ってきたのは興味深いですね。

 投げるときにひねったりして、肘に負担が来たこともありました。何か球種を増やすというか、カーブとチェンジアップだけでは厳しいなというのがあったので。スライダーも真っすぐと同じように腕を振ることを意識したおかげで、少しは真っすぐが良くなったのもあるのかなと思います。

――意識として、現在投げているスライダーと以前のスライダーは違うボールですか?

 スピードは違いますね。曲げる意識かどうか。ひねるか、ひねらないか。

――では違うボールですね。使う局面も変わっていますか?

 僕も楽しみにしているんです。「銀、ここで出してくるか」って感じることもありますね。スライダーのサインが出されると、「それなりに信用してきてくれているんだな」って、僕も思います。それにしっかり応えて投げたいなという感覚ですね。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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