ウィリアムズ姉妹敗退に見た世代交代の波=全仏オープンテニス
全仏オープンは前回覇者のセリーナ(写真)、姉のビーナスとも2回戦で敗退する波乱となった 【Getty Images】
姉のビーナス(米国)も56位のアンナ・シュミエドロワ(スロバキア)に1−2(6−2、3−6、4−6)で逆転負け。セリーナ32歳、ビーナス33歳に対してムグルザは20歳、シュミエドロワは19歳――パワーテニスの象徴として君臨するウィリアムズ姉妹が若手相手に同時陥落し、ローランギャロスは大荒れの様相を呈してきた。
姉妹そろって敗退の波乱に衝撃
第2セットもビーナスが第3ゲームを先にブレーク。しかし、シュミエドロワは正確なストロークで常に反撃の機会を狙い続けた。第4ゲーム、ラリーからビーナスを前に引き出してロブ・エース。さらにシュミエドロワは、バックハンドのダウンザラインをノータッチで通してブレークバックし、第6ゲームも続けてブレークしてリードを奪った。前後への揺さぶりが効果的で、疑心暗鬼が見え隠れし始めたビーナスのショットの威力が落ちた。こうなれば、挑戦者へ風向きが変わる。ファイナルセット、シュミエドロワは第1、第3ゲームをブレークし、ビーナスの必死の追撃に冷静さを失わず逃げ切った。
前後して試合が始まったスザンヌ・ランラン・コートに、衝撃が移った。妹のセリーナ・ウィリアムズは、前哨戦となった5月のBNLイタリア国際で優勝し、勢いそのままに今大会の連覇を狙ってきたが、この日はサーブが苦しい。ムグルザの果敢なリターンを警戒したのだろう、第1セットの第3、第5ゲームはいずれもダブルフォールトからブレークを許した。
全仏では2度優勝しているセリーナだが、優勝回数は他のグランドスラム大会より少なく(全豪5回、全米6回、全英5回)、2012年には111位(当時)のビルジニ・ラザノ(フランス)に1回戦で負けている。ずるずると第1セットを落とし、第2セットも3ゲーム立て続けにサービスゲームを奪われ反撃の糸口をつかめなかった。
1月の全豪オープンを制したナ・リ(中国)の1回戦敗退に続き、女王セリーナも姿を消した。第1、第2シードが3回戦まで進めなかったのはオープン化以降のグランドスラムでは初めてのことで、クレーコートの難しさと女子ツアーの現状を浮き彫りにした。
若手にとってクレーコートは飛躍の舞台
この日のシュミエドロワ、ムグルザは、一回りの年齢差など関係ないかのように思い切り攻め続けた。30代とはいえ、姉妹のパワーは抜きんでているが、少しでも甘く入ればライン際に逆襲を食った。セリーナは今季のクレーコート初戦だった3月のファミリーサークルカップで、世界78位(当時)の20歳、ヤナ・セペロバ(スロバキア)に敗れている。若手選手はトップのこうしたほころびを敏感につかみ、足掛かりにしようとチャンスをうかがっているのだ。
もちろん、若手がいきなりグランドスラムの頂点に躍り出るわけではない。トップ100の誰もがトップ10を倒す力を持っていても、グランドスラムの7試合を勝ち抜くことは別の話。しかし、失敗を反省し、自信を重ねる積み木作業が着々と進行している。ムグルザとシュミエドロワが対決する3回戦に注目したい。
女子のその他の試合では、アグニエシュカ・ラドワンスカ(ポーランド)、マリア・シャラポワ(ロシア)、ドミニカ・チブルコワ(スロバキア)らは3回戦に駒を進めたが、第20シードのアリーゼ・コルネ(フランス)が18歳の黒人選手、テイラー・タウンゼント(米国)に敗れている。なお、女子ダブルスで出場予定だった青山修子(近藤乳業)、レナタ・ボラコバ(チェコ)組の試合は雨で順延になった。
一方、男子シングルスでは、ノバック・ジョコビッチ(セルビア)、ロジャー・フェデラー(スイス)、トマシュ・ベルディヒ(チェコ)、マイロス・ラオニッチ(カナダ)らが3回戦に勝ち進んだ。
(文:武田薫)
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